東京高裁平成12年10月25日判決

◇ 東京高裁平成12年10月25日判決 平成11年(ネ)第3668号損害賠償等請求控訴事件
(原審・東京地方裁判所平成3年(ワ)第13124号、第16101号、差戻前当審・当庁平成8年(ネ)第2302号、差戻前上告審・最高裁判所平成10年(オ)第1146号)

      判    決

東京都杉並区本天沼三丁目一番一号
控訴人  宗教法人幸福の科学
右代表者代表役員  大川隆法
右訴訟代理人弁護士  佐藤悠人 松井妙子 野間自子
東京都文京区音羽二丁目一二番二一号
被控訴人  株式会社講談社
右代表者代表取締役  野間佐和子
東京都文京区音羽二丁目一二番二一号 株式会社講談社内
被控訴人  森岩 弘
右両名訴訟代理人弁護士  河上和雄 的場徹 山崎恵 成田茂

      主    文

一 原判決を次のとおり変更する。
 1 被控訴人らは、控訴人に対し、各自二〇〇万円及びうち一〇〇万円に対する平成三年一〇月八日から、うち一〇〇万円に対する平成三年一一月二二日から、いずれも支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 2 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟の総費用はこれを八分し、その七を控訴人の、その余を被控訴人らの各負担とする。
三 この判決の主文第一項1は、仮に執行することができる。

      事実及び理由

第一 控訴の趣旨
 一 原判決を取り消す。
 二1 被控訴人らは、控訴人に対し、原判決別紙(一)記載の謝罪広告を、表題の「謝罪文」とある部分並びに末尾の「株式会社講談社」「代表取締役野間佐和子」「週刊『現代』編集人森岩弘」及び「宗教法人幸福の科学主宰大川隆法殿」とある部分はそれぞれ明朝体一号活字とし、本文は明朝体五号活字として、週刊現代第二頁目に縦二四センチメートル、横一八センチメートルの大きさで掲載せよ。
  2 被控訴人らは、控訴人に対し、各自二〇〇〇万円及びこれに対する平成三年一〇月八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 三1 被控訴人らは、控訴人に対し、原判決別紙(二)記載の謝罪広告を、表題の「謝罪文」とある部分並びに末尾の「株式会社講談社」「代表取締役野間佐和子」「週刊現代編集人森岩弘」及び「宗教法人幸福の科学主宰大川隆法殿」とある部分はそれぞれ明朝体二号活字とし、本文は明朝体五号活字として、週刊現代第二頁目に縦二四センチメートル、横一八センチメートルの大きさで掲載せよ。
  2 被控訴人らは、控訴人に対し、各自二〇〇〇万円及びこれに対する平成三年一一月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 四 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
 五 第二、三項の各2につき仮執行の宣言
第二 事案の概要
 一 本件は、被控訴会社の発行する週刊誌「週刊現代」に掲載された記事が、宗教法人である控訴人の名誉・信用を毀損するものであるとして、控訴人が、被控訴会社及び右週刊誌の編集長であった被控訴人森岩に対し、謝罪広告及び損害賠償を求め、原審が、控訴人の請求をいずれも棄却したので、控訴人が控訴した事案である。
  1 差戻前の当審は、概ね次のとおりの理由で、控訴人の請求をいずれも棄却すべきものとした。
   (一) 本件第一記事部分について
 公共の利害に関する事実で、公益を図る目的に出たものと認められ、主要部分をなす「三〇〇〇億円集金構想」については真実であることの証明があり、控訴人本部への現金入り段ボール箱搬入の事実について、被控訴人らが真実であると信ずるにつき相当な理由があったものと認められるから、違法性を欠くか故意・過失を欠く。
   (二) 本件第二記事部分について
 控訴人を離脱した立場にある者からの評論的な言辞として社会的に許容される範囲のもので、一般読者の通常の注意と読み方を基準として判断すると、控訴人が社会から受ける客観的評価を低下させるものとは認められない。
   (三) 本件第三記事部分について
 公共の利害に関する事実で、公益を図る目的に出たものと認められ、大川主宰が「活動推進報告」などの形式で報告を受けていたことには真実であることの証明があり、右報告がもとで辞めざるを得なくなった会員がいたこと、右報告書が陰で「ゲシュタポ・レポート」と呼ばれていたことを含めた記事内容について、被控訴人らにおいて真実であると信ずるにつき相当な理由があったものと認められるから、違法性を欠くか故意・過失を欠く。
   (四) 本件第四記事部分について
 控訴人に対する批判的立場にある者がする言辞として社会的に許容される範囲のもので、一般読者の通常の注意と読み方を基準として判断すると、控訴人が社会から受ける客観的評価を低下させるものとは認められない。
  2 控訴人の上告に基づき、上告審は、本件第一記事部分に関する事実及び第三記事に関する事実は、取材の相手方だけでなく、取材に当たった者の特定もされていない抽象的な内容のものであって、このような事実をもって、被控訴人らが本件第一記事部分及び本件第三記事部分の内容が真実であると信ずるにつき相当な理由があったと認めるのは相当ではないとの理由で、差戻前の当審判決を全部破棄し、本件を当裁判所に差し戻した。
 二 当審における当事者の主張
   次のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
  1 控訴人の主張
   (一) 本件第一記事部分について
     (1) 本件第一記事部分は、「『三〇〇〇億円集金』をブチ上げた大川隆法の大野望」というセンセーショナルな見出しの下に書かれたものであって、その真実性の立証においては、〈1〉控訴人から「三〇〇〇億円集金計画」が発表されたこと、〈2〉その計画が極めて強力に会員に周知されたこと、及び、〈3〉控訴人がそれに基づいて「三〇〇〇億円集金」を目指した積極的な集金活動を開始したこと、の三点が立証されなければならず、単に「ミラクル三〇〇〇億円献金構想」があったことやそれまでと比べて際立って積極的な集金活動を行ったことを立証するのでは足りない。しかしながら、控訴人においては、具体的に三〇〇〇億円もの集金の計画は存在せず、そのための具体的な体制も組まれたことはなく、右の三点はいずれも真実ではない。
     (2) 段ボール箱による現金搬入の事実はなく、被控訴会社の記者が控訴人の職員から現金搬入を目撃したと聞いたという供述内容は、明白に不自然で真実味に欠ける。
   (二) 本件第二記事部分について
 宗教団体に関する報道では、宗教団体とその主宰者とは区別されていないし、読者の側も区別して読まないのが通常である。本件第二記事部分は、控訴人の最も重大な公式行事である講演会における大川主宰の発言に関する記述であり、大川主宰に対する誹誘中傷は、控訴人の社会的評価を低下させるものであることは明らかである。
   (三) 本件第三記事部分について
     (1) 本件第三記事部分の内容は、「みんなが陰で『ゲシュタポ・レポート』と呼んでいる『業務報告』で少数の『腹心』に悪く言われた人は、すぐ控訴人から追い出された。控訴人の草創期はこのような運営がなされていたのであり、この団体は当初から『問題教団』になる危険性をはらんでいた」というものである。しかし、大川主宰には会員の人事権はなく、「活動推進委員報告」も密告的な報告書などではないし、これが「ゲシュタポ・レポート」と呼ばれていた事実もない。
     (2) 被控訴人らにおいて控訴人の元役員等から取材したものであるとしても、控訴人に対して批判的立場に立つ人物からの一方的な情報に基づくものであって、被控訴人らにおいてその内容が真実であると信じるにつき相当な理由があったとは到底いえない。
   (四) 本件第四記事部分について
 本件第四記事部分は、本件第三記事部分と同一号の全文わずか四頁の同一記事の断片であり、大川主宰個人だけでなく、控訴人の幹部についても触れており、記載内容そのものも、大川主宰の純然たる私的行状ではない。しかも、記事の内容が事実であるとすれば、一般読者は、大川主宰が一晩で百万単位の金銭で豪遊する執着物欲だらけの人間であるとの印象を持つことは明らかである。控訴人が宗教法人であり、大川主宰及びその「側近」なる人物は聖職者であることに照らすと、本件第四記事部分は、聖職者の品位ひいてはそのような人物に指導されている宗教団体である控訴人の社会的評価を傷つけるものであることは明らかである。
   (五) 取材源の秘匿について
 被控訴人は、本件第一ないし第四記事部分の内容の真実性又は真実であると信じたことの相当性の立証において、控訴人による嫌がらせの可能性があるから取材源を秘匿する必要があるとして匿名にしている。本件第一、第三記事部分については裏付け取材を行ったと主張するが、取材源を秘匿している。しかし、内容の真実性又は相当性の立証は被控訴人らが立証すべき抗弁事実であり、取材源の秘匿を許すなら、被害者は有効な反証ができず、取材源の存在を主張すれば免責されることになってしまう。被控訴人らの「取材者と取材源の安全確保」は、被控訴人側の主張立証の程度を緩和するものではない。また、控訴人は、被控訴人らの主張する違法な攻撃や威迫をしていない。
  2 被控訴人の主張
   (一) 本件第一、第三記事部分の真実性及び真実であると信じたことの相当性について
     (1) 本件第一記事部分について
       本件第一記事部分は、被控訴会社の週刊現代編集部の契約記者である高山和男(高山記者)が、控訴人本部の正会員から直接取材したものである。高山記者が、平成三年六月一五日、約二時間にわたり右正会員と会って取材したところ、右正会員は、控訴人の幹部の状況や献金活動の実態等を具体的事実に即して話し、控訴人の本部で段ボール箱が搬入されていたので、経理の人が口で指にシーッという形を作って「そうですよ、でも人にいっちやだめですよ。」と言われたという体験事実を述べ、控訴人には「とにかくすごくお金があるんです。」とか、作家の景山民夫氏も会員であることを話した。
 高山記者は、同月一八日、控訴人本部のある紀尾井町のビルの前で同ビルに出入りする控訴人関係者と思われる人に直接声をかけて取材を試み、これに応じた控訴人の女性職員から、控訴人本部に現金の入れられた段ボール箱が運び込まれていること、段ボール箱はガムテープで補強されていること等の話を聴き、控訴人が段ボール箱で現金を搬入していることを確認した。
 高山記者は、右各取材後、データ原稿を作成して秋元編集者に渡した。
 高山記者は、同月一九日、再度前記正会員から現金搬入を目撃した話を聴き、週刊現代の編集者秋元直樹(秋元編集者)も途中から同席したが、前回の取材結果と矛盾はなかった。
 週刊現代編集長であった被控訴人森岩は、同日夜、編集次長村松恒雄(村松次長)に裏取り取材を指示し、村松次長はこれを担当デスクの谷雅志(谷デスク)に指示した。谷デスクは高山記者に裏取り取材ができているか質問したところ、高山記者は前記のとおり控訴人職員から裏取り取材ができている旨説明した。また、高山記者は、控訴人の講演会会場で段ボール箱を使用して献金された現金を集めたり運んだりしていることは、高山記者自身の実体験であることを報告した。
 谷デスクは、念のため知人の宗教関係者に連絡をとったところ、そのうちの一名から、「永田町の政治家秘書や宗教団体政治担当から少なくとも四名が控訴人の職員に転身しており、相当な額が毎日控訴人本部に入金されているようだ。」との話を聴いた。そこで、谷デスクは裏取り取材も十分であると考え、村松次長を通じて、被控訴人森岩に報告した。
     (2) 本件第三記事部分について
 平成三年九月二日から六日にかけて、控訴人による被控訴会社に対する威力業務妨害等の違法な攻撃があったことから、当時、被控訴会社の週刊現代編集部は、総力を挙げて控訴人に対する取材を精力的に行っており、他方、控訴人の職員や会員の中には、控訴人の過激な攻撃的活動に批判的な考えを持ち、匿名条件ながらも、積極的に取材に応じる者が少なくなかった。このような状況の中で、発足して間もない控訴人内部では、幹部が職員や会員の動静を把握するため、一部の職員に、職員や会員間の通常の会話の中に出てくる陰口や上部批判を文書形式で秘密裏に報告させていたという情報と、その情報を裏付ける内部文書のコピーが集められた。
 秋元編集者及び高山記者が、同月八日、控訴人の草創期から携わり、元役員である会員(元役員)に直接取材を行ったところ、右会員は、控訴人内部で職員や会員の動静を把握するための内部報告文書を見たことがあると述べており、秋元編集者及び高山記者が持参した「活動推進委員報告」を見て、「これがそうだ。」と明言し、控訴人内部では、職員や会員の動静についての報告を秘密警察になぞらえて、「ゲシュタポ・レポートみたいだね。」と話し合っていたという事実を述べた。秋元編集者及び高山記者は、右取材結果を報告したところ、編集部から、この報告書を「ゲシュタポ・レポート」という表現で誌上に掲載して良いか元役員に確認するよう指示され、元役員に確認を求めたところ、元役員は、そういう表現でよい旨回答した。
 高山記者は、「ゲシュタポ・レポート」という表現について、裏取り取材をすることにし、同月一〇日から一一日にかけて、右元役員から紹介された控訴人の会員二名と前記(一)記載の正会員に順次裏取り取材を行った。右三名はいずれも、「ゲシュタポ」という表現をすることについて、控訴人が「少しでも悪意を持った者は処罰対象とするかのような詮索をしていた点で、深層部分への警察行為と同じ」であるとして、右表現方法に間違いないと確認した。
 これらの取材に基づき、高山記者は、データ原稿(乙五一、五二)を作成した。
   (二) 本件第二、第四記事部分について
 宗教団体の社会的評価とは、教団としての構成及び信者の信仰の態様をも含めた宗教的活動の実情とその社会的投影に向けられたものであり、教祖個人の社会的評価とは別個のものであるから、教祖には、教祖個人としての名誉権、プライバシーの利益が認められるべきであり、教祖を対象とした言論は、教祖に対する権利侵害の問題として捉えられるにすぎない。例外的に、宗教団体自体の教義、構成、行動として、教祖の言動、私生活が記述され、その記述が宗教団体を対象にしたものと読者に理解される場合に限り、宗教団体自体を被害者とする不法行為の成否を論ずることができるのである。
 本件第二記事部分は、大川主宰の講演内容についての元会員の印象に基づく要約を摘示し、これを基礎として、大川主宰の個人的情報であるその性格について、控訴人とは無関係に大川主宰個人を評価したものであり、その講演内容が控訴人の教義や行動として記述されているわけではない。したがって、一般読者が、本件第二記事部分を控訴人の教義や宗教活動についての記述であると理解することはない。
 本件第四記事部分も、大川主宰個人の行状が摘示されているにすぎず、控訴人の教団としての行動や構成を評しているものではない。
   (三) 取材源を匿名にしている点について
 憲法二一条の表現の自由には、事実報道の自由が含まれ、報道のための取材の自由も憲法上十分尊重されなければならないとされており、取材源の秘匿も、報道機関側の権利であり義務でもある。本件においては、控訴人は、被控訴会社に対して組織的に違法な業務妨害等の攻撃を行ったほか、その社員を中傷するビラの配布や、イベントに対する妨害行為、取材源への嫌がらせ等の違法行為を繰り返していたものであり、被控訴会社において、今後も控訴人を対象とする取材、報道を継続するためには、取材源を確保し、かつ、これを秘匿せざるを得ない。これは取材源の安全と国民の知る権利のための情報源の確保という民主主義の根幹に根ざす利益であり、強く保護されなければならない。
 また、本件における伝聞先を秘匿した証言は、伝聞先の氏名は秘匿しているが、伝聞内容にアクセスできる立場にあることを具体的に証言しており、その証明力は十分である。
第三 当裁判所の判断
 当裁判所は、控訴人の本訴請求のうち、本件第一記事部分及び本件第三記事部分についての損害賠償請求は一部理由があるので認容し、その余は理由がないので棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおりである。
 一 当事者の地位及び本件記事の内容について
 原判決理由一に説示のとおりであるから、これを引用する。
 二 本件記事部分による控訴人の名誉・信用の毀損について
 当裁判所も、本件第一、第三記事部分は、控訴人の社会的評価を低下させたものであるが、本件第二、第四記事部分は、控訴人の社会的評価を低下させたものとはいえず、したがって、名誉毀損には当たらないものと判断する。その理由は、本件第二、第四記事部分に関する説示を次のとおり改めるほか、原判決理由二に説示のとおりであるから、これを引用する。
  1 原判決二二枚目裏九行目の冒頭から同二四枚目表二行目の末尾までを次のとおり改める。
   「2 本件第二記事部分
     (一) 前記争いのない事実、証拠(甲九の1ないし3、一一、一二、一四の2)及び弁論の全趣旨によれば、本件第二記事部分は、平成三年六月一六日に広島県内で行われた控訴人会員を対象とした控訴人主催の講演会に参加した元会員が受け止めた大川主宰の講演内容の断片と、右元会員の『自分以外の者が勝手なことをしたり、注目を集めるのが許せない。』という大川主宰に対する評価から構成されていること、右の講演会は、控訴人の会員を対象として、控訴人によって開催されたものであり、同講演会における大川主宰の公演内容は、『正法とは何か』という標題の小冊子にまとめられ、控訴人によって販売されていることが認められる。このことからすれば、本件第二記事部分は、大川主宰に関する記事ではあるが、同時に、控訴人が開催した講演会での控訴人の教祖の講演内容に関する記述でもあるから、控訴人に関する記述としての意味をも有するものと認められる。
 しかしながら、右記事部分の前半である講演内容の断片に関する記述は、『霊能力があるという会員などに惑わされないようにせよ。』、『その霊能力も大川主宰が授けたものである。』と大川主宰が述べたというものであり、何ら控訴人の社会的評価を低下させるものではなく、また、右記述部分の後半は、控訴人の『元会員』という控訴人から離脱した者の言辞であることが、その記述自体に明らかにされていることをも考慮して、一般読者の通常の注意と読み方を基準に判断すれば、批判的な立場にある者の主観的な評価に基づく評論的言辞として社会的に許容される範囲内のものであり、これによって、控訴人が社会から受ける客観的評価を低下させるものとは認められないというべきである。
     (二) なお、控訴人は、本件第二記事部分は、『大講演会』という控訴人の最も重要な公式行事における大川主宰の発言を捏造したものであると主張する。
 しかしながら、右講演会において、大川主宰が被控訴人らの主張する(抗弁4(一))内容の講演を行ったことは、当事者間に争いがないところ、右講演内容に照らすと、これを聴いた元会員の理解したところを要約摘示した本件第二記事の記述が、必ずしも正確なものではないにしても、末だ大川主宰の発言を捏造したものとまで認めることはできない。
 また、控訴人は、右記事部分では、大川主宰の人格がいかにも貧しく、人を導く資格がないかのように記述されているとして、そのような人物を教祖として仰ぐ控訴人自体の名誉が毀損された旨主張するが、右記事部分を読む一般読者が控訴人の主張するような印象を受けるとは認められないから、控訴人の主張は採用の限りでない。
     (三) 以上によれば、本件第二記事部分によって控訴人の社会的評価が低下したとすることはできず、控訴人の名誉が毀損されたものということはできない。」
  2 原判決二五枚目裏九行目の冒頭から同二七枚目表一行目の末尾までを次のとおり改める。
   「4 本件第四記事部分
     (一) 前記争いのない事実、証拠(甲五の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば、本件第四記事部分は、『週刊現代』平成三年九月二八日号の前記記事の最後の部分で、『五〇万円の絵をボンと買って』という見出しの下に、大川主宰の人となりを記述したものであり、『では、いったいどんな“素顔”をもった人物なのだろうか。』という文章に引き続き、ある画家が銀座の画廊で『観音様』をテーマにした個展を開いたとき、大川主宰が四〇号の『観音様』の絵を五〇万円で買ってくれたこと、大川主宰がその画家と銀座の高級クラブでヘネシーを飲んだことがあることなどを、その画家の感想を交えながら記述したものであることが認められる。
 右記述は、大川主宰の個人的行状を記述したものであるが、本件第三、第四記事部分を含む記事全体は、控訴人を主題としたものであり、また、大川主宰が控訴人の代表者で、宗教的信仰の対象とされていることを考慮すれば、同時に控訴人に関する記述としての意味をも有するものと認められる。
 しかし、本件第四記事部分のうち、絵を買ったことやクラブで飲酒したことに関する部分は、控訴人の会員にとっては抵抗があるとしても、一般読者の感覚を基準にすれば、大川主宰個人に対する評価を超えて、控訴人の社会的評価までも低下させるような事柄ではないと認められる。また、画家の感想に関する部分は、いかなる点でそのように評価するのか、何ら具体的事実に基づかない主観的な感想を記述したものにすぎず、控訴人に対する批判的立場にある者がする言辞として社会的にも許容される範囲内のものであり、一般読者の通常の注意と読み方を基準として判断すれば、これによって控訴人に対する社会的評価を低下させるものとは認められない。」
 三 被控訴人らの抗弁について
  1 公共の利害に関する事実及び公益目的の存在
 当裁判所も、本件第一、第三記事部分は、公共の利害に関する事実であり、かつ、公益を図る目的に出たものと判断するが、その理由は、原判決理由三の1に説示のとおりであるから、これを引用する。
  2 本件第一記事部分の真実性について
 控訴人が「ミラクル三〇〇〇億円献金」と称して献金を求めたことは当事者間に争いがなく、証拠(甲九の1ないし3、乙一、一〇、一九、二七の1ないし3、二八、二九、三二、三五、原審証人秋元)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は、宗教法人として認可された直後の平成三年五月頃以降、その機関誌に総本山ビル、地方本支部、研修施設の建設を目的とした「ミラクル献金三〇〇〇億円」構想を発表し、控訴人会員に対して、それまでと比べて際だった積極的な集金活動を行ったことが認められる。しかし、段ボール箱で控訴人本部に現金が搬入されたという部分については、証拠(原審証人秋元、当審証人高山、被控訴人森岩)によれば、高山記者に対し、控訴人の会員が、右現金運搬を目撃したと語ったことが認められるものの、本件全証拠によっても、右会員の言辞が真実に合致するものであることを認めることはできない。
 なお、控訴人は、「三〇〇〇億円の集金計画が発表され、この計画が極めて強力に会員に周知され、控訴人がそれに基づいて『三〇〇〇億円集金』を目指した積極的な集金活動を開始したこと」が立証されなければならず、単に「ミラクル三〇〇〇億円献金構想」があったことや、それまでと比べて際立った積極的な集金活動を行ったことを立証するのでは足りない旨主張する。しかし、証拠(乙二によれば、控訴人の機関誌である「幸福の科学」平成三年六月号では、大川主宰の発表した構想である三〇〇〇億円の献金について、明確かつ強力に会員に協力を呼びかけており、同号にはそのための振込用紙まで付されていたことが認められるので、控訴人主張のような事実を立証対象ととらえる前提に立っても、右部分に係る事実は真実であると認められる。
 そうすると、本件第一記事部分の主要部分については、真実であることの証明があったものというべきである。
  3 本件第一記事部分のうち、控訴人本部への現金入り段ボール箱搬入の事実について、被控訴人らが真実であると信ずるにつき相当な理由があったか否かについて
   (一) 証拠(甲九の1ないし3、一五の1、2、九八、九九、乙一、一〇、三五、四八、五五、五六、原審証人秋元、同小田、当審証人高山、同谷、被控訴人森岩)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人らが本件第一記事部分を掲載するまでの取材等の経緯について、次の事実が認められる。
     (1) 高山記者は、平成三年三月か四月頃、控訴人に入会して三年になるという中堅会員某(以下、第一記事関係において、単に「中堅会員」という。)と偶然知り合い、同人から、「控訴人にはお金がものすごく集まっている。」という話を聞いた。また、この頃、控訴人の機関誌に「三〇〇〇億円献金」という記事が掲載され、高山記者は、これについて秋元編集者から情報を収集するよう依頼された。そこで、高山記者は、中堅会員に対し、二回の直接取材をした。
     (2) 秋元編集者は、同年六月一四日、控訴人と深い繋がりのあるGLAという宗教団体の会員と取材で会った際、「ミラクル献金三〇〇〇億円」と題する記事が掲載された月刊「幸福の科学」平成三年六月号を見せられた。同編集者は、このような三〇〇〇億円献金の目的、方法等について取材を通してレポートすれば、宗教団体として急速に成長し、大きな社会的関心を集めている控訴人の実体を明らかにできると考え、担当副編集長及び谷デスクと協議した。その結果、同副編集長は、秋元編集者に対し、裏付け取材をするように指示した。
     (3) 高山記者は、同月一五日午後六時頃、赤坂のキャピタル東急ホテルのロビーで、単独で中堅会員に二時間位会って話を聞いた。中堅会員は、控訴人の本部で段ボール箱が搬入されているところに居合わせ、経理担当者にそれがお金であるか聞いたところ、同人は、口に指を当て、「シーッ」という形を作って、「そうですよ、でも人に言っちゃ駄目ですよ。」、「とにかくすごいお金があるんです。」と言った旨話した。高山記者は、この取材につき、データ原稿(乙五〇)を作成して秋元編集者に渡した。
     (4) 秋元編集者は、同月一五日、担当記者一名とともに、控訴人の正会員を娘に持つ母親に会い、約二時間取材したが、この母親は、秋元記者らの取材に対し、同年三月付けで控訴人から会員宛に出された全国本支部展開・研修道場建設等のため献金を募る手紙を示しながら、同年六月になってから娘のお金集めの活動が非常に盛んになり、学校にも行かないで活動していると話した。
 なお、秋元編集者は、控訴人を取材する過程で、他のマスコミ関係者から「植福箱」と書かれた段ボール製と思われる献金箱が映っている写真を示され、控訴人の西荻窪総合本部の写真であるとの説明を受けた。
     (5) 取材の結果、同月一七日の週刊現代編集部の企画会議において、本件記事を特集記事とすることが承認された。これを受けて、秋元編集者及び三名の記者は、本件記事のために、次の取材を含めて約三〇か所の取材を行った。
     (6) 高山記者は、同月一八日午前、控訴人の本部のある紀尾井町ビルの前で取材を行った。この目的は、現金入り段ボールのことを含めて、三〇〇〇億円献金のために集金しているという本件第一記事部分全般についての情報を確認するためである。
 高山記者は、この取材について、編集部で秋元編集者に報告した。
     (7) 秋元編集者は、同月一九日、控訴人の広報課に赴き、広報担当者に面談取材を行い、「ミラクル献金三〇〇〇億円構想」と題する記事が掲載された「幸福の科学」平成三年六月号を示した上、「これは何なのか。」、「献金が本部に集まってきつつあるのか。」、「どういう方法で集まってきているのか。」、「献金のノルマがあるのではないか。」、「会員に強制しているのではないか。」等を質問したが、右広報担当者は、「広報課としては分からない。」、「特に具体的な計画があるわけではない。」、「強制はしていない。」などと回答した。しかし、秋元編集者は、控訴人の総合本部における段ボール箱による現金搬入の事実の有無については、尋ねなかった。
     (8) 高山記者は、同月一九日夜、中堅会員に対する第二回目の取材をキャピタル東急ホテルのロビーで行い、前記同月一五日の話の内容を確認した。この際、秋元編集者も途中から同席したが、中堅会員の話は、前回と矛盾することはなかった。
     (9) 週刊現代編集長であった被控訴人森岩は、同日夜、秋元編集者が取材した人物とは別の取材源から本件第一記事部分の裏取り取材をするよう村松次長に指示した。
     (10) 谷デスクは、原稿締切日の翌日である同月二〇日午前二時頃、村松次長から、裏取り取材、すなわち別ルートの情報源からの取材確認の指示を受けて高山記者に連絡した。
 高山記者は、谷デスクから、ポケットベルに連絡が入ったので、谷デスクに電話したところ、「現金を段ボール箱で搬入していることにつき裏は取れているのか。」と聞かれた。確認が取れているかという質問自体を侮辱と感じたが、控訴人の本部の職員にも直接話を聞いたので一応確認は取れている旨答えた。なお、この電話では、現金入り段ボール箱の記事部分以外についての質問はなかった。
     (11) 谷デスクは、高山記者から裏取り取材ができていることを確認した上、同日朝、知人の宗教ジャーナリスト、教団関係者数名に電話をしたところ、「永田町の政治家秘書や宗教団体政治担当者から四名が控訴人の職員に転身している。彼らから聞いた話では、相当な額が毎日のように控訴人本部に入金しているようだ。」との情報を得たので、高山記者の取材内容は信憑性が高いと判断し、同日昼過ぎ、その旨村松次長に口頭で報告した。
     (12) 被控訴人森岩は、同日の夕方には同次長から裏取りができた旨の報告を受けた。
     (13) この当時は、控訴人による被控訴会社への攻撃は全く予想できない時期であった。
   (二) 右の取材については、次のような点を指摘することができる。
     (1) 当審証人高山は、紀尾井町右ビルの前で、午前九時から二時頃までの間に、二、三名の者に声を掛け、三人目位の女性が控訴人の職員であったことから、この者に、名刺を渡し週刊現代編集部の記者であることを告げて、正味五分位取材した旨、高山記者が、控訴人本部に現金が集まってくる事実及び搬入される方法について、「どんどん全国から集ってくるんですか。」、「箱とかそういうのですか。」、「段ボールとか?」と質問したのに対し、女性は、にこやかに非常に嬉しそうな顔で、特に隠そうとすることもなく、「もうとにかくいろんな形でくるんです。」、「とにかく箱とかは別に選んでないみたいで、とにかくお金が集って来ちゃってる。」、「段ボールとかもある。」と答えた旨供述する。
 しかしながら、右の供述には、次のとおりの問題がある。
     〈1〉高山記者による取材の内容は、控訴人以外の多数の事務所が入居している高層ビルである紀尾井町ビルの前で、偶然出会った女性に、ほんの五分程度、それも大ざっぱな質問をしたに止まり、対象となった者は、単に女性というだけで、氏名も所属部署も明らかでなく、果たして真に控訴人の職員かどうかも不明であるというべきであり、このような取材方法自体、裏取りとしては不十分と言わざるを得ない。
     〈2〉証拠(甲五八の1、乙三五、原審証人秋元)によれば、当時、被控訴会社の雑誌「週刊現代」は、控訴人に対する継続取材をしており、既に平成三年五月二五日号に、控訴人に関する批判的な記事が掲載されていたことが認められるところ、現金を搬入するのに段ボールに入れて行うという方法は、社会的に否定的評価を生むおそれのある事実であるから、控訴人の職員という立場にある者が、偶然出会った一記者、それも被控訴会社の者に対し、右のような重要な事実につき、控訴人本部に何の断りもなく、隠そうともせず、しかも「にこやかに」話したなどということ自体、余りにも不自然なことである上、仮に高山記者の供述するような職員に対する取材が実際に行われていたならば、裏取り取材としての絶好の機会であるから、段ボールの大きさ、搬入時期・頻度、一回の搬入個数等具体性に富んだ質問の展開が十分予想されるところ、実際には、「どんどん全国から集ってくるんですか。」、「箱とかそういうのですか。」、「段ボールとか?」との質問に対し、「もうとにかくいろんな形でくるんです。」、「とにかく箱とかは別に選んでないみたいで、とにかくお金が集って来ちゃってる。」、「段ボールとかもある。」との受け答えをしたにすぎず、余りにも簡潔、概略的な内容であって、当初取材の正確性を補強するための裏取材としては、極めて不自然の感を拭えない。
     (2) 谷デスクは、裏取り取材の有無について、既に締切日を過ぎている差し迫った段階で、村松次長から指示を受け、その翌日の真夜中に高山記者に確認し、同記者から控訴人本部で職員に直接確認したという極めて重要な情報を得たというのにもかかわらず、その後、更に自己の知人の宗教関係者へ電話などをし、ようやく翌日夕方になって、村松次長に報告をしているが、いかにも遅すぎて不自然であり、高山記者から聞いた裏取り取材の内容の信用性に問題があったために、記事にするかどうかの決断が遅れたものではないかとの疑問を払拭できない。なお、谷デスクが知人から得た情報は、控訴人本部への現金入り段ボール箱搬入の事実に関するものではない。
   (三) 差戻前の当審判決において、前記(一)に認定した事実のうち、秋元編集者が関与した事実については、ほぼ同旨の事実が認定されていたが、上告審は、本件第一記事部分に関する事実は、取材の相手方だけでなく、取材に当たった者の特定もされていない抽象的な内容のものであって、このような事実をもって、被控訴人らが本件第一記事部分の内容が真実であると信ずるにつき相当な理由があったと認めるのは相当ではないとの理由で、本件を当裁判所に差し戻したものであるところ、差戻後の当審において、被控訴人らは、取材の相手方については相変わらず明らかにしないが、取材に当たった者が高山記者であることを明らかにし、同記者は、当審証人として、その取材活動について供述をしたものであるところ、右供述には右(二)(1)に説示したとおりの疑問がある上、右供述を加味して認定し得る事実は、前記(一)程度にとどまることからすると、これによって、上告審の提起した問題点について、実質的な裏付けをしたものと評価することは困難であり、他に特段の証拠もない本件においては、未だ被控訴人らにおいて、本件第一記事部分のうち現金入り段ボールの搬入の事実が真実であると信じたことにつき、相当の理由があったものと認めることはできないものというべきであるから、右記事部分については違法性が阻却されないといわざるを得ない。
 したがって、被控訴人森岩については右記事を編集して発行させた者として、被控訴会社については被控訴人森岩の使用者として、それぞれ不法行為が成立し、被控訴人らに対し、連帯して損害賠償義務がある。
  4 本件第三記事部分のうち、「活動推進委員報告」などの形式で、大川主宰が腹心から報告を受けていたことの真実性について
 控訴人設立前の教団草創期に、「活動推進委員報告」と題する書面が大川主宰に提出されていたことは、当事者間に争いがなく、証拠(甲四八、四九、乙二ないし五、三五、原審証人高橋守、同秋元、同高橋和夫)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人においては、大川主宰が最終的な人事権を把握していること、控訴人設立前の教団草創期において、最終的な人事権を握る大川主宰が、その腹心から、時々の会員の動静について、「活動推進委員報告」などの形式で報告を受けていたことが認められる。しかしながら、その報告がもとで配置転換等によって実質的に辞めざるを得ない状況に追い込まれた会員がいた例があること、右報告書が陰では「ゲシュタポ・レポート」と呼ばれていたことについては、原審証人高橋和夫の供述中にはこれを否定する部分があり、その信用性を一概に否定することはできないし、他にこれが真実であるとまで認めるに足りる証拠はない。
  5 本件第三記事部分のうち、右「活動推進委員報告」などの報告がもとで、実質的に辞めざるを得なくなった会員がいたことや、この報告書が、陰で「ゲシュタポ・レポート」と呼ばれていたことについて、被控訴人らが真実であると信ずるにつき相当な理由を有していたか否かについて
   (一) 被控訴人らが本件第三記事部分を掲載するまでの取材経緯について、証拠(甲五の1ないし3、一七ないし二〇、四八、四九、五四、乙二ないし五、二、三五、三六、原審証人高橋守、同秋元、当審証人高山、同谷、被控訴人森岩)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
     (1) 平成三年九月二日以降、控訴人の会員らによる被控訴会社に対する抗議行動が行われたが、週刊現代編集部は、右抗議行動を言論・出版活動に対する不当な妨害であるととらえ、「週刊現代」九月二八日号に控訴人への批判記事を掲載することを決めた。控訴人については、それ以前においても継続的な取材が行われていたが、取材活動が更に強化され、秋元編集者及び記者三名が、控訴人に関する記事のために、延べ約三〇か所を取材した。
     (2) 週刊現代編集部は、同月五日頃、控訴人草創期の「活動推進委員報告」を入手した。右報告書は、控訴人の草創期に実際に存在したものであり、大川主宰から「活動推進委員」に指名された幹部会員が作成する文書であるが、同報告書の中には、信仰上問題のある会員について指導・教示等の「内部監査」を行ったことの大川主宰への報告や、「霊障気味の人、長電話の人、問題のある団体に所属している人、教祖・拝屋タイプ等」の「問題児」についてのリスト作成を大川主宰が指示していることが記載されたものがあった。
     (3) 秋元編集者及び高山記者は、同月八日、控訴人に草創期から携わり、役員の経験もある控訴人会員某(以下、この項においては、単に「元役員」という。)にその自宅で直接面会し、既に入手していた右「活動推進委員報告」 を示して取材した。右会員は、取材に対し、大川主宰が、幹部から上がってくる業務報告によって個々の会員の言動、動向を把握していたこと、「活動推進委員報告」は右業務報告の一種であること、業務報告で悪く言われたことがもとで、結局、会員を辞めることになった人がいることなどを述べた。
 この会員は、他の複数の者との間で、この報告書を「ゲシュタポ・レポートみたいだね。」と話し合っていたことを話した。
 なお、秋元編集者は、元役員に対し、それ以降も電話で三、四回確認の取材をした。
     (4) 秋元編集者は、同月一〇日頃、控訴人草創期に活動推進委員を務めた経験のある高橋守に直接会い、右「活動推進委員報告」を示して取材した。同人は、同報告書が「ゲシュタポ・レポート」と呼ばれていたことは知らなかったが、「活動推進委員報告」には問題がある者の行動が報告され、これがもとになって左遷させられ、その結果、辞めてしまった会員がいたとの話をした。
     (5) 高山記者は、前記の話を編集部に報告したところ、編集部から、「ゲシュタポ・レポート」との表現で良いか確認して欲しいとの指示があったので、高山記者は、同月一〇日及び一一日の両日、元役員から紹介して貰った二名の会員と前記現金入り段ボールの搬入の事実についての取材源となった中堅会員の計三名に順次会って確認したところ、「少しでも悪意を持った者は処罰の対象とするかのような詮索をしていた点で、深層部分への警察行為と同じ」という理由で、「それで間違いないと思う。」、「そういう表現でよい。」とのことであったので、その旨回答した。
     (6) なお、控訴人に対する取材は、同年八月末頃から取材が事実上拒否されていたため、行われなかった。
   (二) 右の取材については、次の点を指摘することが出来る。
     (1) 当審証人高山は、前記(一)(3)に認定した「ゲシュタポ・レポートみたいだね。」と話し合っていたとの話から、次第にゲシュタポという言葉がかなり独り歩きしたのだと思うが、そういうふうにして、「ゲシュタポ・レポート」という言葉を聞いたとか、「ゲシュタポ・レポート」ということを会員あるいは控訴人の内部の者が言っていたことを聞いた旨供述するに至っているのであって、その供述内容自体がきわめて曖味なものであると言わなければならない。
     (2) 原審証人秋元の供述によれば、元役員が秋元編集者らの取材を受けたのは、同月二日から行われていた控訴人による被控訴会社の業務妨害について怒っていたからであるというのであり、これによると、元役員は、当時、被控訴会社の報道を巡って対立関係にあった控訴人に対し、批判的な考えを持って取材に臨んだ者であるから、中立性を欠き、情報の客観性には疑問がある。そこで、その客観性を担保するための裏取り取材が必要になるのであるが、証人秋元の供述によれば、裏取り取材の対象となった三名の会員は、いずれも元役員に紹介された者であり、これらの者もまた、同じく控訴人の業務妨害に怒っていたことから取材に応じたもので、元役員と同様控訴人に批判的な者であったというのであるから、その客観性には同様に疑問がある。
     (3) 証拠(乙七、原審証人高橋守)によれば、「活動推進委員報告」は、その性質上、ごく一部の上層部の者にしか存在が知られない極秘事項で、一般の会員には知られないものであり、大川主宰によって「三人の大黒天」とまで称揚された高橋守(昭和六一年三月入会し、同年六月に活動推進委員に就任して退会まで務め、昭和六二年夏に退会した者)でさえも、その存在は知っていたが、その内容が開示されることはなかったというのである。そして、当審証人高山の供述によれば、裏取り取材については、初期の役員からは協力が得られなかったというのであるから、実際に対象となった三名の者は、右のような報告書の存在・内容及びその機能を、本来知り得る立場になかった者である可能性を否定することができないはずである。それにもかかわらず、そのような者が何故に極秘資料である報告書を見たり知ったりする機会があり、しかも、「ゲシュタポ・レポート」と通称されていることまで知るに至ったのかという点についての説明が十分されているとはいえず、取材源としてはその信用性に問題がある。
     (4) 「活動推進委員報告」などの報告書が基で辞めざるを得なくなった会員がいたとの事実については、乙第二ないし第五号証の「活動推進委員報告」は、具体的に特定人を辞めさせるというような記載は見られず、その体裁も断片的なメモ程度の記載にすぎず、辞めさせるための判断の基礎資料として十分な情報が集められているのか疑問であり、右の報告書の存在及びその記載内容自体から、本件第三記事部分のような事実があることを窺わせるに足りるものではない。もっとも、証拠(原審証人高橋守)によれば、控訴人経営の喫茶店に配転替えされた後、控訴人から退会した会員がいたことは認められるが、右会員の退会が右報告書がもとになったことを窺わせるに足りる証拠はない。
   (四) 第三記事について、差戻前の当審判決において、前記(一)に認定した事実のうち、秋元編集者が関与した事実については、ほぼ同旨の事実が認定されていたが、上告審は、本件第三記事部分に関する事実は、取材の相手方だけでなく、取材に当たった者の特定もされていない抽象的な内容のものであって、このような事実をもって、被控訴人らが本件第三記事部分の内容が真実であると信ずるにつき相当な理由があったと認めるのは相当ではないとの理由で、本件を当裁判所に差し戻したものであるところ、差戻後の当審において、被控訴人らは、取材の相手方については相変わらず明らかにしないが、取材に当たった者が高山記者であることを明らかにし、同記者は、当審証人として、その取材活動について供述をしたものであるところ、右供述には右(二)(1)に説示したとおりの疑問がある上、右供述を加味して認定し得る事実は、前記(一)程度にとどまることからすると、これによって、上告審の提起した問題点について、実質的な裏付けをしたものと評価することは困難であり、他に特段の証拠もない本件においては、未だ被控訴人らにおいて、本件第三記事部分のうち、「活動推進委員報告」などの報告がもとで、実質的に辞めざるを得なくなった会員がいたことや、この報告書が、陰で「ゲシュタポ・レポート」と呼ばれていたという事実が真実であるとを信じたことにつき、相当の理由があったものと認めることはできないものというべきであるから、右記事部分については違法性が阻却されないといわざるを得ない。
 したがって、被控訴人森岩については右記事を編集して発行させた者として、被控訴会社については被控訴人森岩の使用者として、それぞれ不法行為が成立し、被控訴人らに対し、連帯して損害賠償義務がある。
 四 損害と回復の方法について
 以上によれば、控訴人は、被控訴人らの不法行為により、宗教法人としての名誉を毀損されたものであるが、その損害の回復の方法として、控訴人の請求に係るような謝罪広告については、全体の記事に占める割合はさほど大きくないこと、確実な裏取り取材を欠いたことは事実であるが、ことさら控訴人に対する悪意をもってされたものとは認められないこと、記事の掲載から既に長期間経過していることなどからすると、謝罪広告を命ずるまでの必要性があるとは認められない。そうすると、本件については金銭賠償によって、損害回復を命ずるのが相当であり、慰謝料額は、本件に現れた一切の事情を考慮して、本件第一記事部分及び本件第三記事部分につき、各一〇〇万円をもって相当と認める。
 五 結論
 以上の次第で、控訴人の本件請求は、被控訴人らに対し、本件第一記事部分につき連帯して一〇〇万円とこれに対する不法行為の後である平成三年一〇月八日から、本件第三記事部分につき連帯して一〇〇万円とこれに対する不法行為の後である同年二月二二日から、いずれも支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから右限度で認容すべきであり、その余は理由がないから棄却すべきである。
 よって、右と一部異なる原判決を右のとおりに変更することとして、主文のとおり判決する。
 (口頭弁論終結の日 平成一二年六月七日)

東京高等裁判所第一一民事部
裁判長裁判官 瀬戸正義
   裁判官 井上 稔
   裁判官 河野泰義

(注)平成12年11月15日付け同裁判所による更正決定に基づき明らかな誤記を訂正した。