◇ 東京高裁平成13年5月31日判決 平成12年(ネ)第4367号損害賠償請求控訴事件

           判           決
   東京都文京区音羽2丁目12番21号
       控訴人(附帯被控訴人)     株 式 会 社 講 談 社
       同代表者代表取締役       野   間   佐 和 子
   東京都文京区音羽2丁目12番21号 株式会社講談社内
       控訴人(附帯被控訴人)     元   木   昌   彦
       上記両名訴訟代理人弁護士    河   上   和   雄
                       山   崎       恵
                       成   田       茂
                       的   場       徹
   東京都品川区東五反田1丁目2番38号
       被控訴人(附帯控訴人)     宗 教 法 人 幸 福 の 科 学
       同代表者代表役員        大   川   隆   法
       同訴訟代理人弁護士       佐   藤   悠   人
                       松   井   妙   子
                       野   間   自   子
           主           文
 1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。
 2 控訴費用は控訴人ら(附帯被控訴人ら)の負担とし,附帯控訴要用は被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。
           事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴の趣旨
  (1) 原判決中控訴人ら(附帯被控訴人ら)敗訴部分を取り消す。
  (2) 被控訴人(附帯控訴人)の請求をいずれも棄却する。
 2 附帯控訴の趣旨
  (1) 原判決を次のとおり変更する。
  (2) 控訴人ら(附帯被控訴人ら)は,被控訴人(附帯控訴人)に対し,連帯して1億円及びこれに対する平成9年2月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  (3) 控訴人ら(附帯被控訴人ら)は,被控訴人(附帯控訴人)に対し,原判決別紙(一)記載の謝罪広告を原判決別紙(二)記載の謝罪広告掲載要領の方法で週刊現代誌上に掲載せよ。
  (4) 控訴人ら(附帯被控訴人ら)は,被控訴人(附帯控訴人)に対し,原判決別紙(三)記載の謝罪広告を原判決別紙(四)記載の謝罪広告掲載要領の方法で朝日新聞・読売新聞・毎日新聞,産経新聞及び日本経済新聞の各新聞全国版朝刊社会面に各1回掲載せよ。
第2 当事者の主張
  当事者双方の主張は・原判決の「事実」中の「第二 当事者の主張」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,被控訴人(附帯控訴人,以下「被控訴人」という。)の控訴人ら(附帯被控訴人ら,以下「控訴人ら」という。)に対する本件請求は,連帯して100万円及びこれに対する平成9年2月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,その余は棄却すべきものと判断するが,その理由は,次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「理由」欄に記載のとおりであるから,これを引用する。
  (1) 原判決38頁2行目の「全寮制予備校を」を「地元の大手予備校である株式会社Gの代表者であるEが中高校生向けの全寮制の予備校を」と改める。
  (2) 同46頁10行目の「右署名活動の結果」から同11行目末尾までを「同署名活動の結果,同年8月上旬の時点で,集計が間に合わなかった御幸ケ原元町地区の反対署名分を除いても,3600名余の建設反対の署名が集まり,同月下旬にはその署名数は4500名余に及んだ。」と改める。
  (3) 同47頁11行目の「建設措置」を「建設阻止」と改める。
  (4) 同49頁7行目冒頭から同9行目末尾までを次のとおり改める。
「被控訴人は,上記反対運動に押されたためか,同月20日建築確認申請を取り下げたが,その一方で,同月24日桜住民の会のD会長を被告として1億円の損害賠償請求訴訟を提起し,また,説明会の開催を拒否した。被控訴人は,同年12月1日に建設計画を当面凍結する旨を表明したが,桜住民の会は,同月8日に「桜住民の会ニュース」というビラを発行するなどして,建設反対運動を展開した。その後,平成8年5月,被控訴人が上記訴訟を取り下げ,被控訴人の広報室長らから桜住民の会の運営委員に対して,施設の建設については住民の意向を十分に反映させた上で建設したい旨の話があり,同年6月17日には「桜小学校児童への布教等に関する覚書」が被控訴人から桜住民の会に提示され,同年7月と9月の被控訴人による説明会を経て,同年10月23日,被控訴人は,再び建築確認申請を行い,同年12月20日建築確認を得た。」
  (5) 同50頁4行目の「以上の事実を」から同51頁7行目末尾までを次のとおり改める。
「以上の認定事実によれば,被控訴人が宇都宮市内に施設建設を予定した3地区のうち,御幸ケ原地区と桜地区では自治会をも巻き込んで強い反対運動が起こったのであり,少なくとも御幸ケ原地区では,被控訴人をオウム教に重ね合わせ,被控訴人の施設建設を上九一色村におけるオウム教のサティアンになぞらえることによって生じた一部住民の不安がその基礎にあったことは明らかであり,平成8年1月当時における3地区の状況をみると,弥生地区では反対運動があったことはうかがわれないが,御幸ケ原地区では反対運動は表面上は終息していたものの,住民の不安や不満は根強く存在しており,桜地区ではいまだ強固な反対運動が相当規模で行われていたのであるから,本件第1ないし第3記事部分で摘示された事実は,その重要な部分において真実であることの証明があったというべきである。」
  (6) 同53頁3行目の「Eは」から同5行目末尾までを次のとおり改める。
「同月12日,Eは,被控訴人側の仲介業者であるJとともにA不動産を訪ね,F部長と面談し,その後もEとJは,A不動産に行って,同部長と交渉を重ね,同月16日に売主である株式会社Hの事務所において売主と買主との間で承諾書を交換することになったが,E及びJは,この時点ではまだ買主が被控訴人であることを明らかにしていなかった。」
  (7) 同54頁4行目の「以上の事実によれば」から同55頁10行目末尾までを次のとおり改める。
「控訴人は,本件第4記事部分が真実であるとして,被控訴人が桜地区に施設建設のための土地を求めた際,売主側を仲介したA不動産に全寮制の予備校を作るためと告げていたことは事実であると主張し,なるほど,乙第11号証(今若作成のデータ原稿)中には,A不動産のB常務の話として,Eが小・中・高一貫の予備校を建設したいと言って土地買入れの申込みをした旨の記載があり,乙第3号証(A不動産のK社長作成の書面)中にも,Eから中・高一貫の全寮制の学校設立のためと言って土地購入の申込みがあった旨の記載があり,証人今若及び同乾は,これらとほぼ同旨の証言をする。
 しかしながら,上記の各証拠から,被控訴人のEが全寮制の学校や予備校を建設するための土地を求めている旨虚偽の事実を告げたと認定することは困難である。すなわち,まず,乙第3号証は,桜住民の会の代表者であるD弁護士から取材班が入手したものであるが(証人乾),その記載の形式及び内容から,同文書は,被控訴人への用地の売却方の仲介をしたことを桜住民の会にとがめられたA不動産が,その言い訳のために作成した文書であることが明らかである上,その作成者であるK社長は,被控訴人側の物件情報担当者であるEとは挨拶をした程度であって,それ以上の話をしたことはないこと(甲16)などに照らすと,その記載内容の真実性については,疑いを抱かざるを得ない。次に,乙第11号証についてみるに,同文書には,A不動産のBの発言として「Eさんから「小・中・高一貫の予備校を建設したいので,あの土地を買いたい」との話があり,・・・商談を進めることになりました。」と記載されているところ,Bの陳述書(甲56)においては,Eがそのような趣旨の発言をしたことに触れていないばかりか,間接的にこれを否定していること,控訴人ら訴訟代理人弁護士山崎恵ら作成のBに対する供述録取書(乙28)においても,EがBらに中・高生向けの予備校を作ると言って土地の買入れを申し込んだことをうかがわせる記載はないことに照らすと,Eの上記趣旨の発言の真実性は疑わしいといわざるを得ない。さらに,証人今若,同乾の各証言は,Bからの間接的な聴取又は乙第3号証に依拠したもので,Eの発言の真実性を担保するには不十分なものでしかない。
 以上の評価に反し,前述の認定,検討したところによれば,被控訴人が本件土地を入手した経緯について,被控訴人の物件情報担当者であったEは,被控訴人の施設建設を目的として宇都宮市内での土地を探すため,平成7年2月上旬ころ,A不動産を訪れた際,B常務及びF部長に対して,学校や研修施設を建設するのに適当な土地を探していると言ったことが認められ,Eは,承諾書の交換をすることになった同年2月16日までは買主が被控訴人であることをA不動産に告げなかったものの,その当日にはこれを売主側及びA不動産に明らかにし,その上で承諾書の交換が行われたものであること,その際のやり取りは,被控訴人側ないしEにおいて虚偽の利用目的を告げたことをわびるでもなく,A不動産側においてもこれを責めるでもなく,「そうじゃないかと思ってたんだよ」という言葉に象徴されるように,日常しばしば見られる交渉中には買主を明らかにしない不動産取引の一事例といった状況であったこと,その後,最終的に売買契約書を取り交わすに至るまでには4か月以上もの期間があり,この間にも売主において翻意して契約を拒否することも可能であったと認められるのに,売主のIは,翻意することなく,買主が被控訴人であることを納得して売買契約を締結したものであることなどの事実が認められる。
 そうすると,被控訴人が本件土地を購入するために,Gの代表者であるEが中・高生向けの全寮制の予備校を作る旨の虚偽の申込みをした事実及び被控訴人の本件土地購入の方法がオウム教の進出方法と本質的に同じであるとの事実はいずれもこれを認めることはできず,したがって,本件第4記事部分につき真実であることの証明があったものということはできない。」
  (8) 同58頁1行目の「甲第1号証」から同6行目末尾までを次のとおり改める。
「本件第5記事部分は,被控訴人との折衝を担当した御幸ケ原地区の自治会の役員が恐怖と不安の本音を語った話として,住民が述べた恐怖に怯える声の具体的な内容を記述したものであることは上記認定のとおりであるところ,証拠(証人今若)によれば,同自治会の役員とは,C自治会長を指し,同人から聞いた住民の発言として同記事部分を記述したものであることが認められる。」
  (9) 同58頁10行目の「対策協議会による組織的反対運動は終息しており」を「被控訴人と御幸ケ原地区の自治会との間で被控訴人施設の建築に関する協定書が取り交わされ,対策協議会による組織的反対運動は終息しており(甲33,34)」と改める。
  (10) 同59頁6行目の「データ原稿たる」を「今若記者が取材結果をまとめたというデータ原稿である」と改める。
  (11) 同61頁5行目の「認められる以上」を「認められない以上」と改める。
 2 よって,原判決は相当であって,本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
       東京高等裁判所第二民事部

            裁判長裁判官   森   脇       勝
               裁判官   池   田   克   俊
               裁判官   藤   下       健

 
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