※ 判決が引用する原判決を補充して読みやすくしたバージョン

◇ 東京高裁平成12年1月20日判決 平成11年(ネ)第3589号損害賠償請求控訴事件
 (原審・東京地方裁判所平成8年(ワ)第25504号)
 (平成11年11月16日口頭弁論終結)

          判         決

   山梨県東山梨郡(略)
       控   訴   人     X
       右訴訟代理人弁護士     山   口       広
       同             杉   山   典   彦
       同             渡   辺       博
       同             朝   倉   淳   也
   東京都杉並区本天沼三丁目一番一号
       被  控  訴  人    宗 教 法 人 幸 福 の 科 学
       右代表者代表役員      大   川   隆   法
   東京都品川区平塚二丁目三番八号 宗教法人幸福の科学内
       被  控  訴  人    A
   栃木県宇都宮市(略)
       被  控  訴  人    B
       右三名訴訟代理人弁護士   小 田 木       毅
       同             佐   藤   悠   人
       同             松   井   妙   子
       同             野   間   自   子

          主         文

 一 本件控訴をいずれも棄却する。
 二 控訴費用は控訴人の負担とする。

          事 実 及 び 理 由

第一 控訴の趣旨
 一 原判決を取り消す。
 二 被控訴人らは、控訴人に対し、各自金二億六四〇〇万円及びこれに対する平
  成三年七月一日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
   本件は、被控訴人宗教法人幸福の科学(以下「被控訴人幸福の科学」という)
  の信者で職員でもあった控訴人が、同じく同被控訴人の信者であり職員でもある
  被控訴人B(以下「被控訴人B」という)及び同A(以下「被控訴人A」という)
  が共謀して控訴人を脅迫するなどして、控訴人に被控訴人幸福の科学に対する二
  億円余に上る献金をさせたことが社会的相当性を欠き不法行為に該当するなどと
  主張して、被控訴人らに損害賠償を求めた事案である。
 一 前提事実(証拠の掲記のない事実は当事者間に争いがない)
  1 当事者
   (一) 控訴人は、被控訴人幸福の科学の元信者であり職員でもあった者であり、
     平成二年一二月一五日以降宗教法人C神社(以下「C神社」という)の代
     表役員を務め、山梨県甲府市丸の内所在の駐車場とゴルフ場賃貸用地を管
     理する会社の経営を行っている(甲一二二)。
   (二) 被控訴人幸福の科学は、大川隆法(以下「大川」という)が昭和六一年
     に創設した宗教団体であり、平成三年三月に宗教法人法に基づいて宗教法
     人として認証された。
   (三) 被控訴人A及び同Bは、被控訴人幸福の科学の信者であるとともにその
     職員でもある者らである。
  2 控訴人の被控訴人幸福の科学入会に至る経緯
   (一) 控訴人は昭和六〇年三月早稲田大学教育学部を卒業後、印刷会社に就職
     したが、昭和六三年二月二五日D(以下「D」という)及びE(以下「E」
     という)夫妻の養子となり、平成元年八月右印刷会社を退職して養父母の
     住む山梨県八代郡御坂町に移り住んで同居するようになった。控訴人の養
     父となったDは、昭和五五年一〇月二九日C神社を設立し、同神社の宮司
     としてその運営管理を行っていた(甲一二二、乙一)。
   (二) 養父母と同居を開始した控訴人は、Dが運営するC神社を承継するため
     に宗教行事の基本を身につける必要があったことから、同人の勧めに従い
     平成元年九月から一年間の予定で山梨県北巨摩郡小淵沢町にあるF神社で
     住込修業を開始した。控訴人は神道宗教行事の習得のかたわら、様々な宗
     教関係書を大量に読み漁るうち、大川の著書に興味を引かれ、その教えを
     正しいものであると信じ込むようになっていった(甲二一二)。
   (三) 控訴人は平成二年二月ころ、大川の著書に挟まれていたチラシに記載さ
     れた「幸福の科学山梨地区連絡所」に電話したところ、被控訴人Bの対応
     を受け、同被控訴人の誘いで同月一〇日ころ山梨県甲府市(以下省略)
     にある山梨地区連絡所を訪問し、同被控訴人と初めて面識を持った。当時
     の連絡所はその後同被控訴人の娘婿となるGの自宅の一部が当てられてい
     た。控訴人は同被控訴人から山梨県下における被控訴人幸福の科学の信者
     組織の責任者であるとの自己紹介を受け、また、控訴人が住込修業をして
     いたF神社のある小淵沢町内に住むHを同被控訴人の信者として紹介され
     た(甲二一二、乙三八)。
   (四) 控訴人は平成二年二月一三日被控訴人幸福の科学への入会願書を千代田
     区紀尾井町にあった同被控訴人の総合本部事務所に持参して提出し、同月
     一七日付けで会員として登録された(甲一二二、乙一四)。
   (五) 控訴人は、平成二年六月、F神社における住込修業を予定より早く終了
     させてC神社に戻り、養父母の実家で同居生活を再開し、後記のとおりブ
     ロック長になった後の同年八月、C神社の関係者に対して「今後は、父D
     のもとでさらなる修行を重ね、真の神官をめざして日夜精進するとともに、
     大川隆法氏の主宰する幸福の科学を支援していく所存でございます」と記
     した挨拶状を送付した。
      控訴人はC神社に戻って以後、週に一回程度の割合で被控訴人幸福の科
     学の山梨連絡事務所に出かけてはビデオ学習会を受けたり、毎週一回催さ
     れる伝道日には知人に電話をかけてビデオ学習会への参加を勧誘したりす
     るなどの信者活動を行っていたところ、平成二年七月ころ、被控訴人Bか
     ら山梨地区東ブロックのブロック長になるよう勧められてこれを承諾した。
     また、控訴人はそのころ、同被控訴人からその知人で姓名判断士と称する
     人物を紹介され、同人から「『X』という名前は今生きているのが不思議
     なくらいの不吉な名前であり、『X’』と名乗ることによって運気が良く
     なる」と言われ、被控訴人幸福の科学の信者内ではそれ以降「X’」と称
     するようになった。
     (乙二八)
   (六) Eは平成二年八月三〇日同人の所有名義であった甲府駅北口の土地を約
     一五億円で売却し、Dも同人の所有名義であった甲府市湯村の土地を三億
     円で売却した。控訴人は養父母の指示に従って右土地の売却手続を行い、
     養父母が控訴人に対して「右売却代金についてはいずれ控訴人に贈与する
     ので控訴人がその管理をするように」と申し渡され、右代金をD名義の銀
     行口座に入金して管理した(甲一二二、一三二、控訴人本人)。
   (七) Dは、控訴人から被控訴人幸福の科学の活動について話をされたり、勧
     められる大川の著書を読んだりするうちに同人の教えを高く評価するよう
     になり、平成二年九月三〇日、同被控訴人に正式に入会した。Dの右入会
     申込書には「私は十数年に更り個、家、社会、国家、地球ユートピアの構
     想に憧れて来た。今回漸くにして我が師を得た次第である」との所信が記
     されているが、それは同人が自筆したものを控訴人に転記させたものであ
     った。Dは、平成二年一〇月二八日のC神社創立一〇周年祭に当たり、同
     日付け「C神社要人へのお願い」と題する文書をC神社関係者に配布して
     被控訴人幸福の科学の運動への協力を呼びかけているが、右文書には「私
     共は今こそ率先陣頭に立たねばならぬ。この時、私の考えと少しも変らぬ
     願っても得られぬ待望久しかった指導的知識人、大川隆法先生が現れた。
     私共が先生に同調するのも当然である。私共C神社要人が、この運動に協
     力する事をお願いするしだいである。」と記載していた。また、控訴人は
     右創立祭参加者全員に文庫本「太陽の法」ほか二冊を配布した(甲一二二、
     乙二九の1、2、三〇、一〇一)。
   (八) 控訴人は、前記のとおり山梨地区東ブロックのブロック長に任命された
     ことから、被控訴人幸福の科学の組織活動、特に伝道活動(会員への勧誘
     活動等)に熱心に従事するようになり、平成二年一一月八日及び同年一二
     月二七日、当時同被控訴人の関東統括支部支部長を務めていた被控訴人A
     から優秀伝道者として表彰状を授与された(甲九八の1、2、甲一二二)。
   (九) Dは平成二年一一月二二日死亡した。
  3 控訴人の被控訴人幸福の科学に対する献金(その1)
   (一) 控訴人は、D死亡後の平成二年一二月一二日ころ、被控訴人幸福の科学
     に対し一〇〇〇万円を交付した(以下「本件金員一」という)。
      被控訴人幸福の科学は本件金員一を当初Eからの借入金として処理し、
     控訴人に対し同被控訴人・E間の平成二年一二月一二日付け金銭消費貸借
     契約書を交付した。その後、同被控訴人は本件金員一を平成三年一一月二
     一日付けで献金に切り替え、控訴人に対しE宛の同日付け領収証を交付し
     た(甲一の1、2、乙三五、三六、一一四)。
   (二) 平成二年一二月一五日午後二時から、甲府ホテル二階会議室において、
     D死亡に伴うC神社代表役員代務者選任と今後の活動方針を議題とするC
     神社責任役員会が開かれ、同日午後四時三〇分から新代表役員選任を議題
     とする同役員会が開かれた。
      最初の責任役員会ではC神社の今後の活動方針として被控訴人幸福の科
     学を支援していくことが決定され、更に、二度目の責任役員会では控訴人
     が代表役員に選任された。最初の責任役員会における今後の活動方針に関
     する決定事項の記載文言は以下のとおりである。
     (1) 故Dの遺言に基づき、故人の理想を受継ぎ、幸福の科学の運動を当法
      人として一層の向上及び実現を期す。
     (2) 幸福の科学の月刊誌または大川隆法氏の書籍を基に、正しき心を探究
      し、かつ真実の世界観、人生観に目覚めておりながらも、この世的にも
      偉大な存在を意とする、偉大なる常識人を目指す。
      (乙三二の4ないし9)
  4 控訴人の被控訴人幸福の科学に対する献金(その2)
   (一) 被控訴人幸福の科学は、平成三年一月、全国の会員数を百万人にするた
     めの下地づくりとして「ミラクルダッシュ」なる方針を提示して組織の拡
     大を図った。右組織拡大の過程で山梨県の組織を支部と称することとなり、
     被控訴人Bが責任者となって山梨支部事務所が開設された。これに伴い、
     控訴人は山梨地区東ブロックのブロック長から山梨支部東地区の地区長に
     昇格し、ほとんど毎日のように支部事務所に出向いて被控訴人幸福の科学
     の組織活動に従事していた。
   (二) 控訴人は、平成三年一月一四日に一億六五〇〇万円、同月一七日に三五
     〇〇万円の合計二億円を、それぞれC神社名義で被控訴人幸福の科学大川
     名義の口座に送金して同被控訴人に交付した(以下「本件金員二」という
     )。
      被控訴人幸福の科学は当初本件金員二をC神社からの借入金として処理
     しており、控訴人に対し被控訴人幸福の科学・C神社間の平成三年一月一
     七日付け金銭消費貸借契約書を交付した。本件金員二は、被控訴人幸福の
     科学が法人格を取得した後である平成三年七月三一日付けで献金に切り替
     えられ、同被控訴人は控訴人に対しC神社宛の金額二億〇一〇七万三九七
     二円(利息込み)の右同日付け領収証を交付した(甲二の1ないし3、乙
     一〇八ないし一一〇)。
   (三) 被控訴人幸福の科学は、平成三年一月から七月までの間、「ミラクル九
     一」と称する同被控訴人の会員を百万人にするという活動方針を提示し、
     「ミラクル」と称する冊子などの書籍を広く頒布して会員勧誘に用いるよ
     う傘下支部に指示するとともに、同年五月中旬ころ三〇〇〇億円を集める
     という計画を発表した。
   (四) 被控訴人Bは、平成三年五月二〇日ころ、控訴人に対して三億円を被控
     訴人幸福の科学に貸し付けてくれるよう依頼したところ、控訴人は平成三
     年五月二二日に二億円、翌二三日に一億円の合計三億円を、いずれもC神
     社名義で同被控訴人主宰大川名義の口座に送金して同被控訴人に貸し付け
     た。平成三年五月二二日に送金された二億円については、返済期限を平成
     四年五月二二日とするC神社・同被控訴人問の平成三年五月二二日付けの
     金銭消費貸借契約書が作成され、平成四年五月一九日、年三パーセントの
     割合による利息五九八万三五六一円を付して同被控訴人からC神社に返済
     された。平成三年五月二三日に送金された一億円については、返済期限を
     平成四年五月二三日とするC神社・同被控訴人問の平成三年五月二三日付
     けの金銭消費貸借契約書が作成された。右貸付けについては、返済期日が
     二度にわたって変更され、その間同被控訴人が年三パーセントの割合によ
     る利息を支払い、最終的に平成五年五月二一日、C神社名義の銀行口座に
     振り込んで返済された(甲八の1ないし3、九の1ないし6、一二二、乙
     二ないし一一、一〇一)。
   (五) 控訴人は、平成三年五月ころ、C神社名義で「御坂町の皆様へのお願い
     」と題する文書に左記のとおり記載して町民に配布し、被控訴人幸福の科
     学の運動への協力を呼びかけた(乙三三)。
                記
     (1) 竹居にあるC神社の宮司のXと申します。昨年九四才で他界いたしま
      した父の遺言を受けて皆様にお願い申し上げます。それは、幸福の科学
      の押し進める全人類幸福化運動への協力です。
     (2) 御坂町の皆様方どうか同封の小冊子をご覧いただいて、この人類幸福
      化運動の主旨にご賛同下さいますようにお願い申しあげます。この運動
      の理解を深めていただく意味でも、月刊「幸福の科学」の購読をおすす
      めしています。今回に限り、六か月分の購読料(月購読料二一〇〇円×
      六か月)をC神社で負担させていただきますのでふるって同封のハガキ
      でお申し込み下さい。
  5 控訴人の被控訴人幸福の科学の職員への就職
    控訴人は、右のとおり信者活動を続け、金銭出捐を重ねていたが、被控訴人
   幸福の科学の職員となるために書類審査資料として平成三年四月二九日付けで
   信仰生活に関する報告書を作成し、同年五月二九日付けで履歴書を作成してい
   るが、右履歴書において希望する部署として「活動推進局」と記載している。
   そして、同年六月七日、東京で職員採用面接を受け、同年七月一日、同被控訴
   人の職員に採用された。控訴人は、同被控訴人の職員として採用された後であ
   る同月一七日付けで「誓約書(職員として入居に際しての心構え)」を作成し、
   右誓約書において「仏陀様から預からさせていただいた山梨東部支部を日本一、
   いや世界一輝いた地域にしていきたいと思います」、「伝道目標を必ず必達さ
   せていただきます」といった抱負、決意を開陳している(乙一五ないし一八、
   一〇一)。
  6 控訴人の被控訴人幸福の科学に対する献金(その3)
    控訴人は、平成三年七月二日に一〇〇〇万円、同月一一日に一〇〇〇万円の
   合計二〇〇〇万円を被控訴人幸福の科学山梨統括支部の口座に送金し(以下「
   本件金員三」という。なお本件金員一ないし三を併せて「本件各献金」という
   ことがある)、右山梨統括支部は同月三日及び同月一二日に右各金員を同被告
   の預金口座に振り込んだ。
    右山梨統括支部は控訴人に対し、本件金員三のうち平成三年七月二日に送金
   された一〇〇〇万円のうち八〇〇万円についてはE宛の、残り二〇〇万円及び
   同月一一日に送金された一〇〇〇万円についてはC神社宛の各同日付けの領収
   書を交付した(甲三ないし七の各1、2、乙六五ないし六九)。
  7 右献金後の控訴人の活動等
   (一) 控訴人は平成四年七月、被控訴人幸福の科学の信者としての活動を通じ
     て知り合ったIと結婚し、同年七月に長男J、平成六年六月に二男Kをも
     うけた。また、控訴人は平成四年八月一日Gと被控訴人Bの長女の結婚式
     及び結婚披露宴に出席し、同人らの結婚を祝福した(甲一二二、乙一二、
     二二の9ないし11、二三の2)。
   (二) 控訴人は平成四年一一月山梨支部で開催された「幸福家庭祈願祭」に参
     加し、右式典において儀式の司会を務めた。右式典には被控訴人Bも参加
     していた(乙二二の13ないし16)。
   (三) 控訴人は、平成四年八月から平成五年一月ころに行われた被控訴人幸福
     の科学山梨支部の活動である「繁栄・発展の会」に主任として参加してい
     た(乙一〇五ないし一〇七、控訴人本人)。
   (四) 控訴人は、本件訴訟の控訴人代理人も務めている弁護士山口広及び同杉
     山典彦を通じ、平成八年二月一五日付け通知書で被控訴人Aほか一名に対
     して同会の職員を退職したことに伴う離職票交付等を求めたが、同書面に
     は、原告は「幸福の科学の教理及び大川主宰先生に対する純粋な信仰を今
     も持ち続けており、信者として生活していきたいと切望しています」と記
     載されている(乙八四の1、2)。
 二 控訴人の主張
  1 被控訴人Bは同Aと共謀の上、控訴人に対し以下のとおり脅迫行為を行い、
   その結果、控訴人の畏怖に乗じて同人から多額の財産を領得した。
   (一) 本件金員一について
      被控訴人Bは、平成二年一二月一一日午後四時ころ、控訴人を被控訴人
     幸福の科学山梨地区事務所に呼び出し、約一時間にわたって控訴人に対し
     「あなたの財産は、神仏が救世運動のためにあなたに預けたものであって、
     本来そのために使わなければならない。お金を出すことでなくなったお父
     さんも喜ぶ。お父さんは『X君がそのお金を出すまであの世に帰れない』
     と言っている。お金に執着していると地獄におちて悪霊になる。地獄界の
     苦しみから逃れたくて地上の人に憑依してその人まで悪霊の支配を受けて
     しまう。財産などのこの世的なものに執着するなと大川主宰先生も言って
     いる。お父さんもそう希望していることが私には分かる。今世執着を残す
     と次の転生では人間として生まれることができない」などと語気鋭く述べ
     て脅迫的説得を行い、右山梨地区を支部に昇格させた上、支部としての事
     務所を開設するための資金として一〇〇〇万円を交付することを承諾させ
     た。控訴人は翌一二日被控訴人幸福の科学山梨地区事務所において、被控
     訴人Bに対し本件金員一を交付した。
   (二) 本件金員二について
     (1) 被控訴人Bは、平成三年一月一〇日ころ、控訴人に対し同被控訴人の
      経営する化粧品雑貨店「キャンディ」内において二億円を貸付金として
      被控訴人幸福の科学に交付するよう要求して次のように述べた。
       「X君は土地を売ったお金が一〇億くらいあったな。そのうち二億円
      を大川先生にお預けしないか。お金に執着して献金できないお前みたい
      な者でも、銀行のように利息の付く貸付金ならできるだろう。これでお
      父さんもまた上の世界に帰れる。良い親孝行ができる。私に逆らうこと
      は私を任命した大川先生にたてつくことになる。たてついた人間は皆地
      獄に堕ちる。私の言うことには服従しないといけない。私の言うことを
      聞かない奴は、和合僧破壊の罪を犯したことになる。殺人や強盗より重
      い罪だ。分かっているのか」
       控訴人は、被控訴人Bの右のような脅迫的説得により畏怖し、被控訴
      人幸福の科学に対し本件金員二を交付して貸し付けた。
     (2) 被控訴人Bは、平成三年五月二〇日ころ山梨支部事務所において、控
      訴人に対し金三億円を被控訴人幸福の科学に貸し付けるよう指示した。
      控訴人はこれを拒否できず、平成三年五月二二日に二億円、翌二三日に
      一億円の合計三億円を被控訴人幸福の科学の口座に振り込んで貸し付け
      た。
     (3) 被控訴人Bは、平成三年六月下旬ころ、控訴人に対し 「おまえは今
      幸福の科学がどういう状況か知っているか。幸福の科学は今が一番大変
      なときで、大川先生の法が広がるかどうかの瀬戸際だ。おまえだけがい
      い生活するんじゃない。お前のお金は今しか使うときはない。おまえの
      お父さんもあの世から献金しろと言っている。今お金を出さなかったら、
      来世は人間に生まれられなくなるからな。これが最後のチャンスだと思
      え。私が献金の機会を提供してやっているんだ。幸福の科学に貸してい
      る五億円のうち二億円を献金しろ。私に逆らったら三宝帰依ができてい
      ないから除名する。和合僧破壊の罪をお前は犯すのか。地獄行きだぞ」
      と述べて、右(1)、(2)の五億円の貸付金のうち二億円を献金するよう指
      示した。
       控訴人は、被控訴人Bの右脅迫的かつ威圧的な説得により畏怖し右被
      控訴人の指示を承諾した。
   (三) 本件金員三について
      被控訴人Bは、平成三年六月末ころ、控訴人に対し電話で「お前がミラ
     クルのお金は全て出せ。出さなかったらただじゃおかない。おまえの財産
     は大川先生がお前に預けただけだ。私の命令に逆らう会員は除名され地獄
     に堕ちる。和合僧破壊の罪を犯すことになる。いつまでも生まれ変わって
     来れなくなる。いいのか。山梨支部としてあれを払えと本部から言われて
     いるんだ。早く払え」などと再三催促して、右冊子「ミラクル」等の代金
     合計二〇〇〇万円を支払うよう説得した。
      控訴人は被控訴人Bの右のような脅迫的かつ威圧的説得を拒否できず、
     被控訴人幸福の科学に対し右代金として本件金員三を支払った。
   (四) 運転資金名下の四〇〇万円の領得
      被控訴人Bは、平成三年四月二〇日ころ、被控訴人幸福の科学甲府支部
     事務所において、控訴人に対し「活動資金がないからお金を出して欲しい。
     私は救世運動に忙しくてまともに働くことができず、借金がある。X君は
     光の天使である私を支える義務がある。大黒天といって、法を広げる使命
     をもった天使を助ける義務がある。この使命を果たさないと地獄に堕ちる
     しかない」などと脅迫的言辞を述べて控訴人を畏怖させ、四〇〇万円の交
     付を迫った。
      控訴人は、被控訴人Bの右脅迫的言辞に畏怖し、控訴人名義の銀行口座
     から同年四月二六日に三〇〇万円、同年五月二日に七七万七〇〇〇円を引
     き出したほか手持ちの現金と合わせて、同月初めころ被控訴人Bに対し四
     〇〇万円を交付した(以下「本件金員四」という)。
  2 被控訴人らの不法行為責任
   (一) 被控訴人B及び同A
      被控訴人Bは同Aと共謀の上、控訴人に対し前記のとおり脅迫行為を行
     い、控訴人の畏怖に乗じて同人から多額の金員を交付させた。また、被控
     訴人Aは同Bの上司であり、常に同被控訴人と緊密な連絡を保って控訴人
     からの財産の領得を企て、同被控訴人をして控訴人に対する脅迫行為を行
     わせて控訴人から多額の金員を交付させた。
      したがって、被控訴人Bと同Aは連帯して控訴人に対する不法行為の責
     任を負う。
   (二) 被控訴人幸福の科学
      被控訴人幸福の科学は、被控訴人B及び同Aを雇用している使用者であ
     り、資金獲得という被控訴人幸福の科学の事業の執行のために被控訴人B
     らに控訴人に対する脅迫行為を行わせて控訴人を畏怖させ、多額の金員を
     同人から領得した。
      したがって、被控訴人幸福の科学は民法七一五条により被控訴人Bらの
     控訴人に対する不法行為について使用者責任を負う。
  3 損害
   (一) 財産上の損害
      被控訴人らの不法行為により控訴人に生じた財産上の損害は前記のとお
     り合計二億三四〇〇万円である。
   (二) 精神的損害
      控訴人は、被控訴人らの前記脅迫行為により畏怖し、その結果被控訴人
     らのために二億三四〇〇万円にものぼる多額の出捐を強制され、これを喝
     取されるに至った。被控訴人らの右不法行為により控訴人が被った精神的
     損害は一五〇〇万円を下らない。
   (三) 控訴人は、前記損害金二億三四〇〇万円の回復を求めて弁護士に委任し
     て本件訴えを提起することを余儀なくされ、控訴人代理人らに対して着手
     金及び成功報酬として合計一五〇〇万円を支払うことを約束した。
  4 消滅時効の抗弁に対する反論
    被控訴人らは、控訴人の請求が不法行為のあったときから三年以上経過して
   いるとして消滅時効を主張しているが、控訴人に対する被控訴人Bらの脅迫的
   言辞を弄した働きかけは、本訴請求の対象となる不法行為の後も継続反覆して
   繰り返されてきたものである。控訴人は、少なくとも平成六年九月三〇日まで
   繰り返し法外な金員を被控訴人幸福の科学に献金又は貸金名下に交付させられ
   ている。控訴人がこのような被控訴人らの脅迫的言辞から自由になって右不法
   行為に対する損害賠償請求ができるようになったのは、平成七年三月一一日に
   控訴人が被控訴人幸福の科学の職員としての立場を離れ、更に平成八年一一月
   一九日に被控訴人幸福の科学を退会することを決意してその意思表示をするに
   至ってからである。
    したがって、右不法行為についての消滅時効の起算日は平成八年一一月一九
   日である。
  5 よって、控訴人は、被控訴人B及び同Aに対しては民法七〇九条に基づき、
   被控訴人幸福の科学に対しては民法七一五条に基づき、それぞれ右献金相当額
   の損害、慰籍料及び弁護士費用として合計二億六四〇〇万円並びにこれに対す
   る不法行為の日の後の日である平成三年七月一日から民法所定の年五パーセン
   トの割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求める。
  6 当審における控訴人の主張(原審主張の補充)
    献金勧誘行為の目的とその用いられた手段・方法及びその結果を客観的外形
   的に認められる事実に基づいて総合的に勘案し、献金を勧誘される側の財産権
   や人格権の尊重との関係で、社会的相当性を逸脱していると認められる場合に
   は、たとえその行為によって勧誘される側の自由な意思が抑圧されたといえな
   いような場合であっても、違法性が認められるべきである。
    本件においては、当時、養父Dという精神的支柱を失った控訴人は社会的に
   孤立した立場にあったこと、被控訴人Bが控訴人の管理下にあった財産を当て
   にしたこと、大川の説く「三宝帰依」の教義は組織の長の指示に常に忠実であ
   れというもので控訴人ら信者はその実践をかねて指示されていたこと、平成二
   年末から翌三年七月にかけての被控訴人幸福の科学の強烈な組織拡大活動のも
   たらした控訴人への影響、大川から直接山梨の責任者に任命されたという被控
   訴人Bの山梨地区・支部での控訴人ら会員への支配力、被控訴人幸福の科学の
   組織拡大に伴う献金勧誘の実態、大川が説く地獄や霊界の恐怖を被控訴人Bが
   あおったこと、控訴人にとって地獄や霊界の恐怖が現実性のある強いものであ
   ったこと、献金額が異常に高額であることなどに照らして、被控訴人Bの本件
   各献金勧誘行為は、社会的相当性を逸脱した違法性を有する。
 三 被控訴人らの主張
  1 本案前の申立てに関する主張
    本件訴訟は、控訴人が不法目的ないし主観的害意によって実体的理由がない
   ことを知りつつ、あるいは重大な過失によりこれを知らずに提起した訴えであ
   り、訴権を濫用した不法行為であって、不適法却下を免れない。
    すなわち、控訴人は被控訴人幸福の科学に対し平成三年五月二三日に三億円
   の貸付けをし、強迫行為によってそのうち二億円を布施することを承諾させら
   れた旨主張するが、右の貸付けは控訴人個人からではなくC神社からのもので
   あり、控訴人は実体的権利が存在しないことを知悉しながら敢えて本件訴訟を
   提起したものであり、また、控訴人主張の不法行為は平成二年一二月から平成
   三年七月までの間に行われたというのであるから、控訴人の損害賠償請求権は
   いずれも三年の消滅時効により消滅しているし、更に、控訴人の主張内容が虚
   構による名誉毀損的言辞に満ちていることや不必要な提訴記者会見を開き意見
   を発表するなど、被控訴人らに対する控訴人の害意が示されているものである
   から、本件は訴権濫用に当たる不適法なものとして却下されるべきである。
  2 本案の請求に関する主張
   (一) C神社名義でされた貸付け、献金の主体について
      控訴人は、C神社名義でされた貸付け、献金は控訴人が被控訴人幸福の
     科学に対しこれを行ったものであると主張するが、控訴人主張のとおり控
     訴人個人からの貸付け、献金であるとするなら、金銭消費貸借契約書、領
     収書及び振込金受取書の当事者名義はC神社ではなく控訴人個人でなくて
     はならない。控訴人は右金銭消費貸借契約の主体がC神社であることを代
     表役員として明確な形で認め(乙三四の2)、宗教法人に対する税法上の
     優遇措置を享受していたのであり、これは実質的にも経済的にも、右契約
     の当事者がC神社であることを示している。
   (二) 脅迫行為の不存在
      被控訴人Bが同Aと共謀の上控訴人に対し脅迫行為をした事実はいずれ
     も否認する。平成二年一二月から控訴人が本訴を提起するまでの控訴人の
     行動を総合勘案すれば、被控訴人Bの脅迫的言辞により控訴人が合計二億
     三四〇〇万円もの大金を貸し付け、献金又は交付させられたという事実が
     およそあり得ないことは明白である。
   (三) 消滅時効
      控訴人主張の不法行為はいずれも否認する。
      仮に右不法行為が成立するとしても、右不法行為は平成二年一二月から
     平成三年七月までの間に行われたというものであるから、右不法行為の日
     から三年以上経過した平成八年一二月二五日に捏起された本訴に係る損害
     賠償請求権は、民法七二四条によりいずれも時効により消滅している。

第三 当裁判所の判断
 一 被控訴人らの本案前の申立てについて
   被控訴人らは、控訴人が不法目的ないし主観的害意によって実体的理由がない
  ことを知りつつ、あるいは重大な過失によりこれを知らずに本訴を捏起したので
  あり、訴権を濫用したものであるから、本訴は不適法であると主張する。しかし
  ながら、控訴人が不法目的又は主観的害意によって実体的理由がないことを知り
  ながら、又はこれと同視すべき重大な過失に基づいて、本訴を提起した事実を認
  めるに足りる証拠はない。本訴で争われている貸付け、献金の当事者については、
  控訴人が代表役員になっている宗教法人C神社であるのか又は控訴人個人である
  のかという事実認定に係る問題であり、その主体を控訴人として主張することが
  不法の目的又は害意によるものと認めることはできないし、また、消滅時効の抗
  弁があり得る事案において提訴することや、訴訟事件について記者会見し、意見
  を述べることそれ自体が直ちに不法行為を構成するような違法なものということ
  もできない。
   以上によれば、本訴提起を違法と認めることはできず、被控訴人の本案前の申
  立てに係る右主張は理由がない。
 二 本案について
  1 前記前提事実記載のとおり、控訴人を介して本件金員一ないし三が被控訴人
   幸福の科学に対し交付され献金処理された事実は当事者間に争いがない。
    控訴人は右各献金を被控訴人らの不法行為によると主張するのであるが、ま
   ずその出捐者が控訴人であるのかについて疑問がなくはない。しかし、右各献
   金の働きかけ並びにその承諾及び金員の交付は、いずれも控訴人自身に対して
   行われ、かつ、控訴人の判断で行われたものと認められるのであるから、仮に、
   出捐者が控訴人でないとしても、それだけで控訴人に対する不法行為として精
   神的損害を含めてされている本訴請求が直ちに否定されるものでもない。した
   がって、出捐者が控訴人であるかの判断はおいて、被控訴人らの控訴人に対す
   る献金勧誘行為が違法性を有し不法行為に当たるかについて判断することとす
   る。
  2 本件金員一ないし三の交付について
   (一) 控訴人は、被控訴人Bが同Aと共謀の上、本件金員一について平成二年
     一二月一一日、本件金員二について平成三年一月一〇日ころ及び同年六月
     下旬ころ、並びに本件金員三について同年六月末ころ、それぞれ金員の交
     付をしなければ地獄に堕ちるなどの言辞を用いて控訴人を脅迫し、被控訴
     人幸福の科学に対し右各金員を交付させた旨主張し、これに沿う供述をす
     る(甲一二二、控訴人本人)。
      しかしながら、控訴人は宗教法人C神社の宮司として同神社を運営管理
     していたDを養父にもち、大学卒業後は印刷会社に就職し、その後C神社
     を承継するために神道の神社で修行をした経験も有していた成年男子(昭
     和三六年九月六日生、本件各献金の交付時に二九歳)である上、後記(2)の
     とおり、本件各献金の交付がされた平成二年一二月から平成三年六月まで
     の期間中及びその前後において、自らの意思と宗教的感性に基づいて大川
     の教えにのめり込み、被控訴人幸福の科学の会員となって同被控訴人の代
     表役員である大川の教えを一層評価、信奉し、控訴人個人にとどまらず、
     養父のD、C神社及びその関係者にまで自発的かつ積極的に働きかけて大
     川の教えを普及させるために会員を勧誘したり、自ら同被控訴人の職員に
     までなったりしたほか、同被控訴人内における自らの地位の上昇を志向し
     て同被控訴人に多額の金員を貸し付けるなど、積極的に同被控訴人のため
     に活動を行っていたことや、控訴人は脅迫の実行者と非難する被控訴人B
     と個人的にも通常の友好的関係を維持していたものであること等の事実が
     認められるのであるから、同被控訴人の地獄に堕ちる等の言辞に接するこ
     とがあったとしても、控訴人が主張するような控訴人の前記一連の金銭交
     付について、同被控訴人による脅迫行為により行われたものであると評価
     することはできないものといわざるを得ない。
   (二) すなわち、前記前提事実に加え、証拠(甲八の1ないし3、九の1、2、
     一一及び一二の各1、一七の4、5、一八及び二〇の各2、一二二、一五
     五、乙一ないし四、一四、一六ないし一八、二〇、二一、二二の4ないし
     21、二三の1、2、二八、二九の1、2、三一、三二の1ないし14、三三、
     三七、五一ないし五三、七〇ないし七五、七七ないし八三、八四の1、2、
     八五の1ないし3、八六の1、2、八七の1ないし5、八九、九〇の1、
     2、九四、九五、一〇一、一〇四及び被控訴人B)及び弁論の全趣旨によ
     れば、控訴人は、平成元年九月ころ大川の著書を読むうちに、自ら同人の
     教えを正しいと信じ込むようになり、自分の意思で被控訴人幸福の科学へ
     の入会申込みをして平成二年三月一七日付けで会員として登録され、同年
     七月には山梨地区東ブロックのブロック長に任命されるなど地位も上がっ
     たこともあって、同被控訴人のために熱心に伝道活動(会員への勧誘活動
     等)を行うようになったこと、C神社の宮司をしていた控訴人の養父Dも
     控訴人の勧誘活動の影響で同年九月三〇日に同被控訴人に正式に入会し、
     C神社の関係者に同被控訴人の宗教活動への協力を呼びかけていたこと、
     Dが同年一一月に死亡し、同年二一月一一日に開催されたC神社の責任役
     員会において控訴人がC神社の代表役員として選出され、C神社の今後の
     活動方針として同被控訴人の活動を支援していくことが決定されたこと、
     控訴人はその親族であるL及び控訴人の養母E(当時九〇歳)が同被控訴
     人に入会するに当たり、平成三年一月一五日付け及び同月二三日付けの各
     入会申込書の推薦者記入欄にそれぞれ推薦文を記載したこと、控訴人は同
     月には同被控訴人山梨支部東地区の地区長に任命され、それ以降ほとんど
     毎日のように支部事務所に出向いて同被控訴人の組織活動に従事したり、
     他の地域で行われる同被控訴人主催の講演会等に参加していたこと、控訴
     人は同被控訴人の内部の試験制度である「資格セミナー」を受験し、平成
     三年一月、三月及び五月にそれぞれ初級、中級及び上級のセミナーに合格
     したこと、控訴人はD及びEの養子となったことから約一八億円にも上る
     高額の金員を管理・処分できる状況に置かれていたところ、被控訴人Bか
     らの要請に基づき、被控訴人幸福の科学に対し同年五月二二日に二億円を、
     同月二三日には二億円をそれぞれC神社の代表役員として同神社名義で貸
     し付けたこと、控訴人は同年五月ころC神社名義で「御坂町の皆様へのお
     願い」と題する文書を町民に配布し、同被控訴人の運動への協力を呼びか
     け、月刊「幸福の科学」の購読を勧誘したこと、被控訴人Bは同年六月一
     日付けで東京都杉並区にある被控訴人幸福の科学関東支部に異動になった
     こと、控訴人は同年六月七日同被控訴人の職員となるための採用面接試験
     を受け、同年七月一日その職員に採用されたこと、その職員採用に伴い同
     月一七日ころ「仏陀様から預からさせていただいた山梨東部支部を日本一、
     いや世界一輝いた地域にしていきたいと思います」「伝導目標を必ず必達
     させていただきます」という内容を記載した誓約書を作成し、同被控訴人
     に差し入れたこと、控訴人は信者仲間の私的行事にも熱心であり、平成四
     年八月一日被控訴人Bの長女の結婚式及び結婚披露宴に出席したこと、控
     訴人は同年一一月に被控訴人幸福の科学山梨支部で開催された「幸福家庭
     祈願祭」に参加し、右式典において司会役を務めたこと、原告は、株式会
     社講談社が発行した週刊現代平成三年七月六日号、週刊フライデー同年八
     月二三日号、同月三〇日号、月刊現代同年一〇月号に掲載された同被控訴
     人や大川に関する記事はいずれも虚偽の事実を捏造したものであり、これ
     に対し抗議する意思を有することや、これらの記事を読んだC神社の氏子
     から控訴人に対し巨額の寄付金を巻き上げられるのではないかという問い
     合わせの電話が相次いだが、これに対し、そのようなことは絶対にないと
     返答したことなどを内容とする平成四年一〇月二〇日付けの陳述書を東京
     地方裁判所に提出する目的で作成したこと、控訴人は、C神社名義で、被
     控訴人幸福の科学に対し、平成三年七月二億五〇〇〇万円、同年八月七〇
     〇〇万円、同年一一月二二五〇万円、同年一二月四〇〇〇万円、平成四年
     五月一億円、平成五年五月三億円、同年九月四〇〇万円の各貸金をした(
     他にも貸金があったが、後記最終返済前に返済済みである。)こと、控訴
     人は平成六年四月に同被告の東京本部への人事異動を受け、平成七年一月
     には同被控訴人の総合本部秘書局に異動し、大川の東五反田にある私邸と
     その近くにある事務所で働くようになったこと、控訴人は、平成六年一二
     月末に、それまでに本件各献金以外にC神社名義で被控訴人幸福の科学に
     貸し付けていた前記合計七億七七五〇万円の返済期限未到来の金員全額の
     中途返済を求め、何らのトラブルなく右要求どおり平成七年一月二〇日に
     右全額の返済を受けたこと、控訴人は、同年一二月一一日に至り、被控訴
     人幸福の科学の事務局次長ら役職員から、他の宗教団体のスパイであると
     疑われて追及されたことなどから、同被控訴人を退職することとし、同日
     付けで退職願を提出して同被控訴人を退職したこと、しかし、控訴人は、
     その後も、大川及びその教えに対する信仰、信奉を持ち続けていることを
     表明していたところ、平成八年一一月一八日付け脱会通知書を発して、家
     族らとともに被控訴人幸福の科学を退会し、本訴請求をするに至ったが、
     それまでは、本件各献金を問題としたことは全くなく、被控訴人らに対し
     本件各献金が被控訴人らの脅迫等の違法行為によりされたものであると主
     張してその返還を請求したことはなかったこと、以上の各事実を認めるこ
     とができる。
   (三) 以上の控訴人の経歴、大川の教えへの傾倒から被控訴人幸福の科学への
     入会、同被控訴人内での控訴人自身の積極的で多様な諸活動、その過程で
     の本件金員一ないし三の献金、その退会に至るまでの経緯等を子細に考察
     すると、右各献金勧誘行為が被控訴人Bの脅迫行為により行われた違法な
     ものと評価するには足りないものというほかない。証拠(甲二一二、乙一
     〇一、被控訴人B、控訴人本人)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人B
     が被控訴人幸福の科学の責任者として活動資金集めに腐心し、控訴人に対
     しその豊富な資産に着目して熱心にその提供を求め、その際に右提供を行
     うことが地獄に堕ちる等のいわゆる死後の不幸を回避するために有益であ
     るなどの言辞を弄したことが窺われないではないが、前記のとおり控訴人
     自身最高学府を出て、神道に身を投じた履歴を有すること、自らの意思と
     信仰心から被控訴人幸福の科学に入信し、信者そして職員として、進んで
     積極的に様々な宣伝活動に従事したこと、本件各献金はそうした過程で行
     われたものであること、控訴人は、右各献金とは別に被控訴人幸福の科学
     に対し合計約七億八〇〇〇万円もの貸金をし、しかも、その全額の返済を
     受けていること等の事情を併せ考えると、被控訴人Bの献金勧誘等に当た
     っての右言辞により、控訴人がその主張のような「地獄や霊界の恐怖」等
     に困惑、畏怖し、その自由な意思を制約されて本件各献金行為をしたもの
     と認めることは到底できず、右言辞をもって違法なものというには足りな
     いというべきである。
      また、本件各献金に係る金額は極めて高額なものであるといえようが、
     金額の多寡がそれ自体で献金行為の違法性を根拠付けるものではなく、控
     訴人にとっては本件各献金に当たって格別の金策を要したものではなく、
     自らの意思で自由に処分できる額のものであったのであり、それを前記の
     とおり自らの信仰のために自由な意思に基づいて提供したものであるから、
     被控訴人らの宗教活動自体を違法とすべき事由を見い出せない以上、右献
     金の高額さの点のみから、献金を求めた行為を違法と評することはできな
     い。
      さらに、控訴人は、大川の教え(教義、言説)の影響を問題とするが、
     控訴人が大川に心酔し、その教えを信奉したのは、控訴人の全くの自由意
     思によるものであり、この点に被控訴人幸福の科学側の何らかの違法・不
     当な働きかけがあったとは認められないし、本件各献金勧誘には大川自身
     は全く関与していないのであるから、大川の教えの影響を本件各献金勧誘
     行為の違法性に結び付けることはできないといわざるを得ない。
      以上に認定、説示したところを総合考慮すると、本件各献金は、大川の
     教えを信奉していた控訴人の自由な意思に基づいて行われたものであり、
     被控訴人Bの脅迫等の献金勧誘行為の結果、控訴人の意思を制約された状
     態で行われたものとは認められず、また、被控訴人Bの献金勧誘行為をも
     って、社会的相当性を逸脱した違法性を有するものとは認められない。そ
     して、他に、控訴人による本件各献金に当たって、被控訴人B及び同Aの
     共謀による違法行為がされたことを認めるに足りる証拠はない。
  3 本件金員四について
    控訴人は、本件金員四について、被控訴人Bから平成三年四月二〇日ころ脅
   迫され、その結果、同年五月初めころ四〇〇万円を同人に対し交付したと主張
   する。
    確かに、控訴人の供述等には右主張に沿う部分が認められ、更に、証拠(甲
   二二九)によれば、控訴人名義の預金から、平成三年四月二六日に三〇〇万円、
   同年五月二日に七七万七〇〇〇円の金員がそれぞれ引き出された事実が認めら
   れる。しかし、右預金引出しの事実は控訴人が被控訴人Bに対して四〇〇万円
   を交付したとの事実を直ちに推認させるものであるとは認め難く、また、被控
   訴人Bは右金員交付の事実を明確に否定する旨の供述をしていること、右四〇
   〇万円の交付については他の金員の交付と異なりそれを証明する文書が一切証
   拠として提出されていないこと、右預金引出しが二回にわたって行われ、しか
   も、その合計金額が控訴人が交付したと主張する金額と一致せず、端数のある
   金額である(同預金の右引出後の残高は三〇五万九三八八円である。)こと等
   を併せ考えれば、右預金引出しの事実及び控訴人の供述等のみでは控訴人が被
   控訴人Bに対し四〇〇万円を交付した事実を認めるには足りないといわざるを
   得ず、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。
    したがって、本件金員四の交付の事実が認められないから、その前提として
   控訴人が主張する被控訴人Bの脅迫、違法勧誘行為の事実も認める余地はない。
 三 よって、控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件控訴は
  いずれも理由がないからこれらを棄却することとし、主文のとおり判決する。

    東京高等裁判所第七民事部

        裁判長裁判官   奥   山   興   脱

           裁判官   杉   山   正   己

           裁判官   沼   田       寛

 
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