◇ 東京高裁平成10年11月16日判決 平成9年(ネ)第2136号損害賠償等請求控訴事件
 (原審 東京地方裁判所平成6年(ワ)第18563号)
 (平成10年7月22日口頭弁論終結)

           判         決

    東京都杉並区本天沼三丁目一番一号
        控   訴   人     宗 教 法 人 幸 福 の 科 学
        右代表者代表役員      大   川   隆   法
        右訴訟代理人弁護士     佐   藤   悠   人
        同             松   井   妙   子
        同             野   間   自   子
    東京都文京区音羽二丁目一二番二一号
        被  控  訴  人      株 式 会 社 講 談 社
        右代表者代表取締役     野   間   佐 和 子
    東京都中野区(省略)
        被  控  訴  人      元   木   昌   彦
    東京都練馬区(省略)
        被  控  訴  人      早   川   和   廣
        右三名訴訟代理人弁護士   河   上   和   雄
        同             山   崎       恵
        同             成   田       茂
        同             的   場       徹

           主         文

 一 原判決を次のとおり変更する。
  1 被控訴人らは、控訴人に対し、各自金一〇〇万円及びこれに対する被控訴
   人株式会社講談社及び被控訴人元木昌彦にあっては平成六年一〇月一三日か
   ら、被控訴人早川和廣にあっては同月一四日から各支払済みまでいずれも年
   五分の割合による金員を支払え。
  2 控訴人のその余の請求を棄却する。
 二 訴訟費用は第一、二審を通じてこれを五〇分し、その一を被控訴人らの、そ
  の余を控訴人の各負担とする。
 三 この判決は一項1に限り仮に執行することができる。

           事 実 及 び 理 由

第一 当事者の求めた裁判
 一 控訴人
  1 原判決を取り消す。
  2 被控訴人らは、控訴人に対し、原判決添付の別紙記載の謝罪広告を、表題
   の「謝罪文」とある部分並びに末尾の「株式会社議談社」、「代表取締役野
   間佐和子」、「FRIDAY元編集人元木昌彦」、「右記事の執筆者早川和
   廣」及び「幸福の科学総裁大川隆法殿」とある部分はそれぞれ明朝体一号活
   字とし、本文は明朝体五号活字として、週刊フライデー記事中に、縦二六セ
   ンチメートル、横一九センチメートルの大きさで掲載せよ。
  3 被控訴人らは、控訴人に対し、各自金五〇〇〇万円及びこれに対する被控
   訴人株式会社講談社及び被控訴人元木昌彦は平成六年一〇月一三日(訴状送
   達の日の翌日)から、被控訴人早川和廣は同月一四日(訴状送達の日の翌
   日)から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
  4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。
  5 3項につき仮執行宣言
 二 被控訴人ら
   本件控訴を棄却する。

第二 本件事案の概要
   次に付加、補正するほか、原判決の「事実及び理由」欄第二に記載されたと
  おりであるから、これを引用する。
 1 原判決二〇頁一行目の「記述されたものである。」を「記述されたものであ
  って、真実を述べたものである。仮にそうでないとしても被控訴人らは右取材
  結果に基づきこれを真実と信じたもので、そのように信ずるについて相当の理
  由があった。」に改める。
 2 同七行目の「真実であり、」の次に「仮に真実でなかったとしても、被控訴
  人らは浜野らの取材結果に基づきこれを真実と信じたもので、そのように信ず
  るについて相当の理由があった。」を加える。

第三 当裁判所の判断
 一 本件第一記事部分について
   本件第一記事部分は「講談社への常軌を逸した抗議行動以来、初めて公の場
  に姿を見せた大川氏は、会員たちの動揺と苦悩を自らも感じ取っているかのよ
  うに、深く傷ついた口調で講演を始めた。」に続いて(1)「私はあなた方に告げ
  る。いま、わが声を聞くものは幸いである。幸いなる者達よ」との聴衆に対す
  る呼びかけ(2)「『救世主』への絶対的な帰依を説」く部分及び(3)「全マスコミ
  に対する批判」の部分から構成されている。
   右記事のうち(1)部分が本件講演そのものでなく、当日上映されたビデオの内
  容の一部であることは甲九八、九九号証に照らし明らかであり、その前の「大
  川氏は、会員たちの動揺と苦悩を自らも感じ取っているかのように、深く傷つ
  いた口調で講演を始めた。」の部分と併せて事実と異なる記事であるといえな
  くはない。また、(2)部分のように表現できる具体的発言は本件講演にも当日上
  映されたビデオにもない。
   しかしながら、右各記事部分は、これによって控訴人の名誉を傷つけたと認
  められる内容ではない。このことは、右記事部分が前記のように事実を正確に
  記述していなくとも、もとよりこれによって左右されるものではない。控訴人
  は、第一記事部分について、控訴人に対して主宰者である大川隆法が選民思想
  を前提に自らへの絶対的服従を説いて、全マスコミを悪魔として敵対関係に立
  つ過激で危険な集団との印象を一般読者に生じさせるものであると主張する。
  しかし、一般読者にとっては、宗教家が信仰の対象への帰依を説くことは格別
  奇異なことではないから、これによって直ちに控訴人が「危険な集団」である
  との印象が抱かれることはない。本件第一記事が控訴人が主張するような印象
  を与えるとすれば、その要因は、その発言をした機会、時期あるいはその公表
  の方法ではなく、発言の内容そのものに存するはずであって、右記事(3)のよう
  な内容を大川隆法が述べたことを一般読者が知って初めて控訴人の危惧するよ
  うな印象をもつことがありうるというべきである。そこで、以下大川隆法の発
  言内容の検討をする。
   本件講演の一部である第一記事の(3)部分すなわち「戦う相手は、悪魔の手先
  であり、権力そのものであるマスコミ。そのマスコミについて『言論の自由と
  いう仮面を被った悪魔』と言いたい放題。」との部分は、当日の大川隆法の発
  言の要約であると認められる(甲九八、九九)。そして右甲九八、九九号証に
  よれば、当日の大川隆法の講演中には次のような発言があることが認められる。
   「昭和四〇年代の後半より、心ない言論が日本を風靡するに至った、その底
   にあるものは、今言ったとおり、人間に真なる理想も信仰も求めないただエ
   ゴイズムの集積による言論の暴力でもあったと私は思う」「その後、その言
   論の専制とも言えるファシズムが次第に日本全土を覆うに至った。」「昨今
   のように銀行界、証券業界、例外を問わず全てのものを圧殺し、彼らの反論
   を聴く余地も与えないと言う猛威を振るっている。これは大きな大きな恐ろ
   しい力が今動き始めているということなのだ。」「何者にも屈することのな
   い巨大なそしてチェックされることのない権力ができあがりつつあることを
   知らねばならない。そのマスコミ権力というものは第四権力から今や日本で
   は第一権力となろうとしている」「今猛威を振るっている言論機関には正し
   い宗教による批判が必要であると私は思う。それを今やらなかったら日本と
   いう国は崩壊の危機にある。」「見よ。間違った言論によってどれほどの公
   害が日本に垂れ流されていることか。そのことによって、どれだけ多くの汚
   れなき魂が汚染されていることか。その汚染をいったい誰が取り除くのだろ
   うか。」「許す愛とは決して悪魔を許すことではない。悪魔の活動を許すこ
   とでもない。その横暴を、その繁殖を許すことでは断じてない。彼らの暴力
   より、心ある人々を守らなければならないのだ。」「今の権力とは、悪徳な
   る言論機関そのものであるのです。この悪魔の牙城に対して、断固として抗
   議しなさい。プロテストしなさい。」「よいですか。信仰とは戦って初めて
   得られるものです。」
   以上の発言内容は、要するにマスコミを現在の我が国で強大な権力と化し、
  誤った言論を駆使して悪魔としての活動をしている存在と規定してこれと戦う
  ことを求めているのであるから、(3)部分の要約は概ね正確なものということが
  できる。そうであれば、第一記事(3)の部分が仮にその内容において控訴人の名
  誉を侵害するものであるとしても、社会的に少なからぬ注目を集めている教団
  である(この点は公知の事実である。)控訴人の主宰者である大川隆法の発言
  の報道として公共の利害に関し、かつ、公益を図る目的をもってなされた報道
  として、右記事の掲載は違法性を帯びるものではなく、これについて被控訴人
  らの責任を問うことはできない。
   また、右発言部分がマスコミ全体を対象にするものではなく、被控訴人講談
  社のみを指すものであるとの控訴人の主張は、本件抗議行動等当時の控訴人、
  被控訴人講談社間の紛争をよく知る立場にいた者にとってはそう理解すること
  が不可能ではなかったとしても、当日の大川隆法の発言がなんらの註釈も限定
  もなく「マスコミ」の語を用い、またそれが「日本全土を覆うに至り」「全て
  のものを圧殺し」たと述べている以上、記事の執筆者がこれを「全マスコミ」
  と言い直したことが明らかにその趣旨を歪めるものということはできず、これ
  をもって被控訴人らを非難することは当を得たものとはいえない。
   次に「『あれはフライデーだけでなく、全てのマスコミヘの挑戦状だと思い
  ました。他の新聞記者達も唖然としていました』(新聞記者)。まさに『マス
  コミは悪魔ですか?』と問いたいところだ。」との記述部分は、右大川隆法の
  発言に関する感想を記したにすぎない上、右感想の対象となった根拠事実は、
  既述のとおり右記事中に明らかにされ、その真実性も立証されているといえる
  のであるし、当該事実に基づいてそのような感想を抱くことも格別不合理とは
  いえないから、右感想を述べた者の氏名等が具体的に明記されていなくても、
  これについて被控訴人らの責任を問うことはできない。
 二 本件第二記事部分について
   本件第二記事部分である「『大川氏を多少は信じていた』という会員は、最
  近の大川氏の変貌ぶりを、こう語る。『当初は、いい取り巻き連中がいたから
  慎重に振る舞っていたと思う。ところが最近は、取り巻きがイエスマンばっか
  りで、ブレーキをかける人がいない。だから、言うことや態度が大きくなるん
  です』」は、専ら大川隆法個人の言動やその取り巻き(原告の組織の幹部の趣
  旨と解される。)と表現されている不特定複数の者らの言動に対する批判であ
  り、大川隆法の最近の態度が大きい、しかもそれが周囲の人間の影響を受けた
  ためであると理解される右の部分の表現は、抽象的なものであって、ほとんど
  個人的な好悪の印象を述べたものに近く、法的保護に値する程に同人あるいは
  同人の主宰する宗教団体である控訴人の名誉を害するものということはできな
  い。右記事によって大川隆法個人の名誉感情が害されることは否定できないと
  しても、右記事の内容からすると右名誉感情に対する侵害は社会生活上受忍す
  べき程度のものと思われるのみならず、名誉感情そのものは大川隆法個人の人
  格に帰属するものであって、これが害されることにより、同人と密接な関係を
  有するとはいえ別個の法人格である控訴人が何らかの法益侵害を被るものとは
  いい難いから、結局、右記事を掲載することが控訴人に対する不法行為を構成
  するものと認めることはできない。
 三 本件第三記事部分について
  1 本件第三記事部分は次の四部分から構成されている(当事者間に争いがな
   い。)。
   (1)そんな大川氏に利用されて、斬られていった人も少なくない。
   (2)そこには教団のために物心両面で援助し、かつて会報にも名前の載った
    「恩人」すら含まれているのだ。かつて「三人の大黒天」の一人とまで
    いわれたが、退会届を叩きつけた高橋守氏(コスモ印刷工業社長=当
    時)も、その一人である。
   (3)88年7月、幸福の科学出版を株式会社にして、やがて収益も上がろうと
    いうときに、高橋氏は印刷から版権まで、すべての仕事を奪われてしま
    った。つまり、幸福の科学側の弁護士から「印税等1千万円を1週間以
    内に支払え」との内容証明郵便が送られてきたのた。幸福の科学が利益
    の独占を狙ったのだろう。しかし、当時の高橋氏は、大川氏への印税な
    ど一括して払える状態にはなかった。突然のしっぺ返しについて、高橋
    氏は冷静にこう語る。「神を標榜する方々が、あのような暴挙を仕かけ
    てくるとは思いもしませんでした。おまけに、その話し合いの最中に、
    取次に対して『すでに高橋氏と太陽出版の了解を得ている』と、勝手に
    嘘をつき、口座を開いていたんです。」
   (4)「彼らには社会常識が通じないんですよ」
  2 本件第三記事部分の(1)は(2)(3)において具体的事実を摘示した高橋の一件の
   ほかに類似の事例があるとの事実を記載しており、第二記事部分とのつなが
   りから、(1)(2)の部分はいずれも大川隆法の行動を記載してはいるが、(3)部分
   と相まって教団のために尽くしてきた会員を教団の利益のために切り捨てた
   との趣旨と理解できるので、控訴人の名誉を毀損する内容であるということ
   ができる。なお、被控訴人らは(3)の部分で「利益の独占を狙った」とされて
   いる主体は幸福の科学出版であって控訴人ではないと主張するが、右記事を
   通常の読者の注意力をもって読む場合、法形式上の主体はともかく、実質上
   控訴人が利益の独占を狙ったと述べる趣旨と受け取れるから、右主張は採用
   することができない。
  3 ところで、事実を摘示する記事によって人の名誉を毀損した者は、その記
   事が公共の利益に関するものであること、その掲載が専ら公益を図る目的に
   出たものであること及び当該記事の内容が真実であったかこれを真実と信ず
   る相当の理由があったことを証明した場合に限り、不法行為責任を免れるこ
   とができると解される。
  4 そこで公益性について検討するに先立ち控訴人と被控訴人講談社との関わ
   りについてみるに、この点については、原判決三五頁二行目から三八頁二行
   目末尾までのとおりであるからこれを引用する。
    右引用に係る認定事実によれば、本件第三記事部分は、控訴人の信者に対
   する対応を取り上げて、本件抗議行動後の控訴人のマスコミに対する見解を
   記述した本件第一記事部分と併せて宗教法人としての控訴人の姿勢を公衆に
   伝達し、かつ、これを批判することを目的として掲載されたものとみること
   ができるから、公共の利害に関し、公益を図る目的を持ってなされたものと
   認められる。
  5 被控訴人講談社は、平成三年五月ころから控訴人に関心を持ち、発行する
   雑誌に控訴人に関する記事を掲載するようになり、週刊フライデーでも同年
   七月頃から被控訴人早川に執筆を依頼し、週刊フライデーの記者が取材して
   作成した原稿を被控訴人早川がとりまとめて最終的な記事に仕上げる方法で
   一連の記事を掲載することにしたが、週刊フライデーの同年九月一三日号を
   発行した直後の同年九月二日本件抗議行動が発生したことから、これまでの
   訴外浜野を担当編集者とし、右早川を含めた四人で構成していたチームを六
   名構成に強化し、同月一一日に取材方針を立て、右抗議行動後氏名不詳者か
   ら頻繁に寄せられるようになった控訴人の内部告発的な情報も利用して取材
   を開始した(乙一一、当審及び原審証人浜野)。訴外浜野は、平成三年九月
   一〇日頃訴外高橋と電話で打ち合わせ、一四日頃被控訴人講談社の記者であ
   る訴外山岸明夫とともに訴外高橋に対して三、四時間ほど取材し、本件第三
   記事中の(2)ないし(4)に沿う内容の供述が得られた(乙一一、当審及び原審証
   人浜野)。その際、訴外高橋からは大川隆法から同人宛の書簡と控訴人と密
   接な関係にある幸福の科学出版株式会社の代理人弁護士から同人に宛てた内
   容証明郵便の封筒のみを見せられた(乙九、当審証人浜野)。そして訴外浜
   野は、当日訴外高橋の取材内容について、記者山岸が訴外関谷に真偽を確認
   してきたことで裏付けが得られたと考えて右取材に基づき右記事の原稿を書
   いて被控訴人早川に渡したが、訴外浜野らは、右高橋の供述についてその裏
   付けのための控訴人に対する取材は行わなかった(乙一一、当審及び原審証
   人浜野、弁論の全趣旨)。その理由を被控訴人らは控訴人に対する取材が事
   実上不可能な状態にあったと主張する。確かに先に見たとおり平成三年九月
   二日以降は被控訴人講談社側と控訴人は激しく反目していたが、これより以
   前の同年八月七日頃には控訴人側で被控訴人講談社に対し、取材に応じる前
   提として当初提示していた大川隆法の著書を読んだ感想文の提出や原稿の事
   前閲覧の条件を撤回して取材に応じる旨述べた(原審証人浜野)経緯もあっ
   たのに、取材申込みすらせず、また、訴外高橋から示された内容証明郵便の
   封筒を手掛りに関与していた双方の弁護士を知ることは可能であったと思わ
   れるのに、訴外高橋に弁護士の名を問い質そうとする姿勢もみられないなど
   裏付け取材は不十分であったといわざるを得ない(たとえ控訴人が取材に応
   じない可能性があったとしても、激しい対立関係が既に生じている相手方に
   関する記事を書くには一層の慎重さが要求されるのであり、そうでなければ
   無責任な単なる意趣返しの記事に終わる危険がある。)しかも、訴外高橋
   は、幸福の科学出版株式会社の役員になれなかったことに対する不満から昭
   和六三年の夏頃には控訴人を脱会して(乙二の1)、大川隆法ないし控訴人
   とその書籍の出版を巡り約一年間にわたる交渉の末、弁護士関与のもとに昭
   和六三年一二月二八日訴外高橋が大川隆法に対し一定額の著作権使用料の支
   払を約束することで示談が成立した(甲九〇、証人細川)者であり、被控訴
   人としても右紛争の存在そのものは認識していた(当審及び原審証人浜野)
   ものであるところ、そのような紛争の一方の当事者だった者のみからの取材
   では事実が正確に述べられない危険性があることは容易に看取できるところ
   である。それにも拘わらず、紛争に深く関与したことも窺われず、その供述
   の信用性が必ずしも高いとは思われない訴外関谷ほか一、二名からの(特に
   関谷については、幸福の科学出版株式会社が設立された前後の事実関係を取
   材したのではなく、訴外高橋からの取材内容の当否を包括的に確認したとい
   う程度のものである。当審証人浜野)取材で、訴外高橋の供述した事実関係
   を事実であると信じたとすればあまりにも軽率であり、被控訴人らが取材源
   の秘匿義務を負っていることから訴外関谷以外の情報提供者の氏名を明らか
   にできないことを考慮しても、右記事の内容を真実と信じたことについての
   相当な理由があったとは認めることができない。
    また、第三記事の(3)の「おまけに、その話し合いの最中に、取次に対して
   『すでに高橋氏と太陽出版社の了解を得ている』と、勝手に嘘をつき、口座
   を開いていたんです。」の記事についても、太陽出版社等から取材を拒否さ
   れたことと、当時の様子を知っている人がいなかったこと(乙一一)を理由
   に裏付け取材がなされていないのは、前記(3)の外の部分と同様である。
    次に、前記事実及び前掲乙二号証の1、2によると、第三記事(2)の「退会
   届を叩きつけた高橋守氏」の部分は真実でない可能性が高く、「幸福の科学
   出版を株式会社にして、やがて収益も上がろうというときに、高橋氏は印刷
   から版権まで、すべての仕事を奪われてしまった。」との部分に該当する事
   実関係についても、訴外高橋の側に控訴人の主張に見られるような不信を招
   く行為があったとの見方が成立する余地がないとはいえず(甲八一の1、2、
   一三七、一三八、一三九の1、2の1ないし4、3の1ないし3、4の1な
   いし4、乙六の1、2、七及び八の各1ないし3、証人細川勝由)、右記事
   が真実であることを認めるに足りる証拠はない。また、「つまり、幸福の科
   学側の弁護士から『印税等1千万円を1週間以内に支払え』との内容証明郵
   便が送られてきたのだ。」との記事については右に該当する事実は認められ
   る(甲八一、乙七の3)けれども、右記事は、その前後関係(殊に訴外高橋
   が右事実を指して「暴挙」と述べたとの記述部分)から、これを読む者に、
   控訴人には訴外高橋に対する一〇〇〇万円の請求権がないか、そうでなくて
   も、右請求権の行使が不当なものであるかのような印象を与えるものであり、
   これを前提として、右内容証明郵便が送付された理由について触れないまま
   控訴人が訴外高橋から仕事を奪ったと断定している部分は、文脈全体として
   みると真実性の証明があるということはできない。また右(3)部分を「突然の
   しっぺ返し」と表現した部分は、そもそも右に見たように控訴人との間に事
   実認識や法解釈の相異・対立があった訴外高橋の側からみた一方的な事実関
   係の見方に立脚する意見表明であるから、不相当な表現というほかない。
   してまた、訴外高橋が控訴人に所属する者らを指して「彼らには社会常識が
   通じないんですよ」と述べたとの(4)記事部分は控訴人と抗争中であった訴外
   高橋の談話として記述されており、右のような関係にある者の相手方につい
   ての評価を報ずるものであることを考慮すれば一般に許容の範囲内にあるも
   のといえなくはないが、本件では、その前提となっている事実が右のとおり
   訴外高橋の一方的な視点からのものであることと相まって控訴人の社会的評
   価を低下せしめるものであると認められる。
  6 なお、右記事のうち(1)部分については高橋の外に「大川(隆法)に利用さ
   れて、斬られていった」人物がいることについての主張も立証もない。
  7 以上によれば、訴外浜野らが作成した原稿に基づきこれを最終的に本件第
   三記事にまとめた被控訴人早川を初め被控訴人らが右記事に係る事実を真実
   であると信じたとしても、宗教団体に関する記事を多数執筆掲載し、控訴人
   とかねてから対立関係にあってその内情について取材を重ねており、また、
   本件記事に関する取材の具体的状況も容易に知り得る立場にあった被控訴人
   ら(甲一三三、乙一一)としては右記事の執筆掲載は軽率にすぎたという批
   判を免れないのであって、被控訴人らに記事の内容が真実と信じたことにつ
   いての相当の理由があったとも認められない。
 四 被控訴人らの責任において
   被控訴人講談社は右記事が掲載された週刊フライデー一〇月四日号の発行元
  として、被控訴人元木は右フライデーの編集者として、被控訴人早川は右記事
  の執筆者としていずれも控訴人に対して名誉毀損による不法行為に基づき右控
  訴人の損害を賠償する義務がある。
 五 控訴人の損害について
   以上によれば、控訴人は、宗教法人としての名誉を少なからず傷つけられた
  ものと認められるが、その損害は謝罪文を掲載させるのを相当とするほどのも
  のではなく、金銭の支払を受けることによって慰謝される性質のものであると
  解される。そして右金額は一〇〇万円をもって相当とする。
   なお、本件訴状が被控訴人株式会社講談社及び被控訴人元木については平成
  六年一〇月一二日に、被控訴人早川については同月一三日にそれぞれ送達され
  たことは記録上明らかである。

第四 結論
   以上の次第で、控訴人の本件請求は被控訴人らに対し各自一〇〇万円とこれ
  に対する不法行為の後である本訴状送達の日の翌日から民法所定年五分の割合
  による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余はいずれも理由が
  ない。よって、これと結論を異にする原判決を右の限度で変更することとし、
  主文のとおり判決する。

    東京高等裁判所第一五民事部

           裁判長裁判官   加 茂 紀 久 男

              裁判官   大 喜 多 啓 光

              裁判官   合 田 か つ 子

 
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